3月1日、国民的アニメ『ドラえもん』の新作映画『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』の公開が始まった。
通算43作品目、藤子・F・不二雄生誕90周年記念作品である本作のテーマは、「音楽」。これまで「恐竜の時代」や「魔法のある世界」、「ロボット」、「宇宙」といったスケールの大きい舞台で壮大な冒険劇を繰り広げてきた数々のドラえもん映画からすると、「音楽」というテーマに意外性を感じる人も多いかもしれない。
ところが、そこはやはりドラえもん映画。本作ではドラえもん、のび太、しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンのいつものメンバーが、不思議な少女・ミッカと出会い、“音楽【ファーレ】の殿堂”を復活させるべく楽器を演奏して“音楽の未来”を救う、という劇場版でお馴染みの熱いストーリーが展開される。
ところで、ドラえもん×音楽というテーマでは、やはりあの“ふたり”を思い浮かべる人が多いのではないか?
そう、ジャイアンとしずかちゃんである。ふたりとも“公害”レベルの騒音をまき散らす人物であり、ドラえもんやのび太などに実害を与えてきたのだ……。
今回は新作映画の公開記念に、ドラえもん全45巻(てんとう虫コミックス)を所持し、映画もすべて試聴した筆者がドラえもんメンバーの音楽センスについて紹介していきたい。※記事内の情報はてんとう虫コミックス(小学館)「ドラえもん」(45巻)、「ドラえもん プラス」(7巻)をもとにしております
公害レベルのジャイアンの歌、しずかちゃんのヴァイオリン
ジャイアンは、言わずもがな歌うことが趣味のキャラクター。しかしながら、その実力は、最悪といっても過言ではないレベルの音痴であることは周知されているだろう。しかしながら、本人は歌手志望でリサイタルを開くこともしばしば……。余計タチが悪いのだ(笑)。
改めて周囲の評価を見てみると、第8巻「キャンデーなめて歌手になろう」では、リサイタル会場で気持ちよく歌うジャイアンを尻目にメンバーは、「のう(脳)がむずむずしてくる。」(のび太)「目がまわってさむけ(寒気)がして」(スネ夫)と散々な言いよう。ドラえもんに至っては「これも公害の一種だよな」と酷評する始末。ジャイアンが歌い切るのを、苦虫を噛み潰したような表情で待つ彼らの姿は、さながら拷問のような一コマだ。
ちなみに原作(てんとう虫コミックス)でジャイアンがリサイタルを決行した(中止や未遂も含む)回数は20回。割合でいうと、2・3巻に1回はリサイタルを行うという割とハードなスケジュールをこなしていたのは素直に驚きだが、ドラえもんたちからすればたまったもんじゃないだろう。
そしてしずかちゃん。彼女はピアノの習い事のほかにヴァイオリンが趣味。作中初期では、上手な設定であったが、連載を重ねていくうちに徐々にお世辞には上手いとは言えない腕前へと変化していく。
第33巻「鏡の中の世界」では、しずかちゃんがのび太に向けてヴァイオリンを演奏するのだが、「ギコ」「バリバリ」「ガギ~」とヴァイオリンらしからぬ不穏な音を鳴らし、そのオノマトペは耳心地の悪さを表現している。
しずかちゃん一筋なのび太も脂汗を流すほどの酷さで、第43巻「へたうまスプレー」では「ジャイアンの歌といい勝負」だと評していた。本人には、ヴァイオリンが下手だという自覚はなく、ジャイアン同様、無自覚の災害をもたらしている。