目次
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ー 小学校1年生から介護に慣れ親しんだ
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ー 夜間の訪問介護、M-1決勝前夜にも
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ー お笑いも介護も両方やっていきたい
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ー 介護は私たちプロに任せてください

 

「介護の仕事って、大変だとかキツいとか、そういった印象を持つ人が多いと思うんです。まあ、それも事実ですが、私にとって介護は“楽しいもの”。はじめて介護の現場に関わったのがまだ子どものときで、遊びの延長としてだったからかもしれませんが」

小学校1年生から介護に慣れ親しんだ

 人一倍大きな身体におかっぱ眼鏡、それに紫色の服がトレードマークのお笑い芸人・安藤なつさん(43)。相方であるカズレーザーさん(39)とともにお茶の間で人気を博す彼女には意外な一面がある。

 実は安藤さん、ボランティアも含めると20年以上介護の現場に携わってきた、いわば介護のスペシャリストなのだ。

「きっかけは、小学校1年生のとき、伯父の家に遊びに行ったこと。伯父は自宅の一部を改修して小規模な介護施設をやっていたんです。脳性まひや自閉症、認知症など、さまざまな症状の人がいて、年齢もバラバラ。

 私は、そんな利用者さんたちと遊ぶのが楽しくて、休みのたびにそこに通っていました。見よう見まねのお手伝い……そんな軽い感覚で、やがて介護の世界に足を踏み入れていったんです

 安藤さんの“お手伝い”は徐々にスキルアップ。高校時代にはアルバイトとして働くようになっていた。

 そんな中、いまでも忘れられない出来事があったという。

「当時、私は施設で暮らす認知症のおばあちゃんの朝の着替えを手伝っていたんです。でも、その人は着替えを嫌がって、いつまでたっても着替えてくれない。私が根負けして他のスタッフさんを呼んでくると着替えてくれるんですが、それがまた悔しくて。

 粘り強く、毎日、何か月も声をかけ続けました。声色を変えてみたり、キャラクターを変えてみたり、自分なりにいろいろ工夫をしながら。するとある朝突然、すんなり着替えてくれたんです。

 ……あのときは本当にうれしかったな。やっと私を受け入れてくれた、信頼関係を築けたと思いました」

 まもなく、お笑い芸人としての活動を始め、ほかのバイトでも大忙しだった安藤さんだが、伯父の施設に通うのをやめることはなかった。

2022年、吸引器を用いて痰の排出を行う喀痰吸引の取材で、介護資格取得専門の教育研修機関・土屋カレッジを訪れた安藤さん。ここを受講して、翌年に介護福祉士の資格を取得 写真提供/土屋カレッジ
2022年、吸引器を用いて痰の排出を行う喀痰吸引の取材で、介護資格取得専門の教育研修機関・土屋カレッジを訪れた安藤さん。ここを受講して、翌年に介護福祉士の資格を取得 写真提供/土屋カレッジ