明るいイメージのみっちょん、でも自分は悩みを抱えているのに……。そのギャップに苦しんだのだ。
世間とのギャップでメンタルが荒れていた
「ミュージカル『阿国』の出演が決まったんだけれどって言われて、“未経験で舞台に立つなんて無理。できないに決まってるじゃない!”って。マネージャーに、それこそ引っ張られるようにして稽古に入ったの」
反抗的になったり内向的になったりと、メンタルは荒れていたが、周囲は温かく迎え入れてくれた。
「木の実ナナさんや鷲尾真知子さんといった大先輩も、スタッフさんも、“みっちょんは明るい子だ”っていうふうに見てくれていて、みんなすごくお優しい……、グレているのが無駄でした(笑)」
その舞台の共演者に、今日まで長いお付き合いが続くことになる敬愛する池畑慎之介/ピーターさんがいた。
「『阿国』では若い踊り子役で、ピーターさんに恋をするの。その後も親子だったり、姉だったりいろんな役で共演させていただいて。プライベートでも男とか女とか関係なく、話ができるんです。大先輩だけれど偉ぶることもなくて、いつも対等にお付き合いしてくださる。私もピーターさんのようにありたいってずっと思ってきました」
令和の社会は、パワハラ、モラハラ意識が強くなり、コミュニケーションの取り方も変わりつつある。昭和の芸能界を知っている芳本さんは、どう感じているのだろうか。
「そりゃあもう、語弊を恐れずに言うなら当時は『なんでもあり』。自分の主張は譲らないから、大御所同士が罵り合いながら大ゲンカしているのを何度も見たしね。“こんなこと言っちゃいけないのかな”ではなくて自分の信念を貫くパワーがあった。それで舞台やカメラの前に立つと、ものすごい存在感で演技をする。そういう本気の姿から学ぶこともたくさんあって、そこがなくなってしまったのはちょっと残念ですね」
面と向かって真っ向から言い合う時代だったから、負けじと自分のメンタルも強くなったのかもしれない。昭和の芸能界で、個性的な役者さんとたくさん共演できたことは財産になっているという。
「俳優、演出家として作品に携わる機会を頂いて、多面的にものを見られるようにもなってきた。とにかく目の前のことに精いっぱい取り組んで、自分が楽しめなくちゃ─その思いでやってきました。大学の教員になったのも、その時々で積み重ねてきた結果だと思ってるんです。だからこのポジションも通過点かもしれませんね」
50代になり、身体の変化も含めて衰えを実感し、更年期も経験済みだと笑う。
「40代の半ばに更年期が始まりました。どこもかしこも具合が悪くなって。でもちょうどその頃、ある作品の演出をしてみないかと言うお誘いがあって、そっちにものすごく集中していたから、あまり落ち込まずに済みました」