現在が“未来から見た過去”だということの恐怖

 松本の不倫飲み会と指原の未成年キス強要に共通するのは、以前は“ギリギリセーフ”という見方もあった言動が掘り起こされ、現在の世間の感覚(倫理観)に照らし合わされて、糾弾されていること。

 これは過去の言動が現在に影響を及ぼしていることになるが、だとしたら現在は“ギリギリセーフ”とされている言動が、10年後ぐらいの未来に掘り起こされて、炎上してしまうなんて可能性も充分あるわけだ。

 そう考えると、けっこう恐ろしい。

 いくつか例を挙げていこう。

 現代では“ブスいじり”はすでにアウトだが、同じ容姿関連の“ハゲいじり”はセーフとされており、芸人同士ではよく「ハゲてるやないか!」といったツッコミが炸裂している。だが今後“ハゲいじり”もタブー化され、10年後のテレビ番組で現在の映像を掘り起こされ、ツッコミを入れいてた芸人が社会的な制裁を喰らうなんて可能性もゼロではない。

 ほかにも現代では“オバサンいじり”はほぼアウトだが、“オジサンいじり”はまだセーフという認識になっている模様。そのためテレビでは、若い女性タレントが中年の男性タレントをオジサン扱いして笑いを取るといったシーンはたびたび目にするが、10年後にその“オジサンいじり”が切り取られ、バッシングを浴びるなんてことも……。

 また、現代のテレビ番組でミスコン優勝経験者の女性があえて高慢っぽいキャラを演じ、ギャグとして優勝を鼻にかける発言をしていたとしよう。それが10年後に掘り起こされたら、ルッキズムを助長する大会の優勝を誇るなんてけしからんと叩かれるかもしれない。

――松本と指原の件は“過去と現在”の話だが、それはつまり“現在と未来”にも置き換えられる問題でもあるということなのだ。

 メディアに出る人たちは、これからは未来の炎上対策もしていかなくてはいけないとしたら、かなりセンシティブな配慮が求められ、発言に相当なセーブがかかる。

 ちょっと攻めた笑いを取るためには、現在の感覚で“ギリギリセーフ”のところを狙っていくこともあるだろう。だが、10年後の世間の感覚に照らし合わせても問題視されないように……ということまで考えたら、言えないこと・できないことのオンパレードになりそうだ。

「他者を傷つけないようにコンプラ厳守で清く正しい振る舞いを心がければいいことだ」と言われてしまえばそれまでなのだが、そんな完璧に清廉潔白で生きている人は、世の中にどれだけいるのだろうか……。

堺屋大地●コラムニスト、ライター、カウンセラー。 現在は『文春オンライン』、『CREA WEB』(文藝春秋)、『smartFLASH』(光文社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『日刊SPA!』などにコラムを寄稿。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。公式Twitter:https://twitter.com/sakaiyadaichi