「ぎょうざくんは3県のハイブリッド」
そんな玉田さんが絵本を描くときに大事にしていることは、子どもたちに楽しんでもらうこと。
「何度も読み返してもらえる、読み飽きない絵本にしたいので、1回目に読んだときはわからなかったけれど、2回目に読んだらここにこんなのがある! みたいな細かな仕掛けは、どの作品にも忍ばせたいなと思っています」
本作の主人公は、5つのひだがあるひと口サイズの焼き餃子で、むっちりとした手足が特徴の“ぎょうざくん”。思わず食べたくなる、いや、ひと目で心を奪われるかわいさだ。
「ぎょうざくんのモデルになったお店や商品とかはないんですが、たまたま“餃子の街”である宇都宮、浜松、宮崎に縁があって。私の出身が茨城県で宇都宮に近く、いま私が住んでいる場所は静岡に近く、宮崎には友人が住んでいて何度か訪れていて、3大餃子タウンの餃子を食べているんです。なので、ぎょうざくんは3県のハイブリッドといえるかもしれません(笑)」
作中にもその3大タウンの特色が生かされているので、本の中でそれを探してみるのも楽しい。
本を開くと、たくさんの餃子の仲間が登場したり、新幹線に乗って旅に出たり、あるものに乗って街中を疾走したりと見ているだけで楽しい光景が広がる。
「たくさんの餃子や上から見た街並みのような細かい描写は、私自身も描いていて楽しかったところです。新幹線の行き先表示板や電柱の看板、トラックのナンバープレートなどには、餃子にちなんだいろいろなアイデアを盛り込んでいるので、そのへんも見どころのひとつです」
本全体のメリハリを出すために、逆に描き込みの少ないページもあえて作った。
「どうしても“間”を埋めたくなっていろいろ描き足してしまうのですが、必要のないものはすべて省いて大胆な構図でシンプルに見せるページも作りました。シンプルなページは構図がうまく決まらないと間が持たないので、そこは難しかったですね」
本作を出して以降、お取り寄せをしたり、人気店を訪ねたりと餃子を食べる機会が増えて、餃子への愛が深まったという玉田さん。