仕事はないし家族には心配されるし

 優しくて、誰より自分をわかってくれている浩次。でも、世間体や将来を考えたら別の男性と付き合うべき?

 郁子のように、好きと安定のはざまで揺れた経験を尋ねると、

「やっぱり俳優活動ですね。安定を選んでいたら、役者という道はないので。安定って、作られたラインの上で生きることのような気がして。もちろん、お金がないと生きてはいけないけど、限りある人生。究極、お金をなんとなく稼いで年を取っていくか、やりたいことをやり続けるか。すごく迷って、選んだのが後者でした」

 小さいころから映画好き。高校卒業後は映画監督を目指して専門学校へ。しかし、意図がうまく伝わらないもどかしさから、自分で演じようと俳優に。

「ただ、いつまでたっても仕事はないし、家族にも心配されるし。“やっぱり安定した職業についたほうがいいのかな”とすごく考えたことはあります」

 '16年公開の『ケンとカズ』で賞に輝いたことが、躍進のきっかけ。専門学校の同期生による初メガホン作だった。

「ただ、そのときもまだバイトはしていました」

 '18年の朝ドラ『まんぷく』の塩軍団・森本役でお茶の間の知名度アップ。現在は言わずもがな、あちこちの作品で引っ張りだこだ。