6位以降は比較的新しめの作品が並ぶが、その中で異彩を放っているのが9位『ひまわり』('96年)の南田あづさ(夏木マリ)。

「'90年代で脚本も井上由美子さんだからか、朝ドラなのにトレンディードラマの香りがするんですよね。

 夏木さんは獣医として女手ひとつで娘を育てる自立した母親で、彼女の恋も描かれる。恋愛に関してはむしろそっちに比重が置かれていて、朝ドラ母としては異端でした(笑)」(カトリーヌさん)

 ランキング形式で朝ドラヒロインの母親役を振り返ってきたが、現在放送中の『虎に翼』で石田ゆり子が演じる母親の描かれ方は、今までの朝ドラとは少し違うのではないかとカトリーヌさんは分析。

2023年末にはNHKBSの番組でイギリスの犬や猫とふれあう姿を見せていた石田ゆり子
2023年末にはNHKBSの番組でイギリスの犬や猫とふれあう姿を見せていた石田ゆり子
【写真】女性1000人が選んだ「最高!」だった“朝ドラヒロインの母”ランキング

「『虎に翼』はあらゆる女性の前に立ちはだかる見えない壁をテーマにしていて、石田さん演じる母親のはるも昭和初期という時代に生きる女性の典型的な例として描かれています。

 家事もやりくりも完璧で猪爪家を支える優れた女性なのに、外に出ると言いたいことをのみ込み、“スン”としている。それが賢い女の生き方だと思っているから、娘の寅子(伊藤沙莉)の法学部進学も当然のように反対する。

 なのに、寅子が若手判事の桂場(松山ケンイチ)から『逃げ出すのがオチだ』と言われたとき、『この若造が!』と啖呵を切り、娘に六法全書を買い与える……このシーンがすごく良くて。ふとしたきっかけで変わっていく女性の姿が、母親のはるを通して見事に描かれているんです。

 実は、社会における女性の変化というのは今までの朝ドラではきちんと描かれてこなかった。基本、ヒロインが力業で突破しちゃうので(笑)。今回も寅子はすでに目覚めている女性ですから、意識の変化という点では母親のほうが大きくなる。はるに視点を置いて見るのも面白いかもしれません」

 橋本環奈主演の次期朝ドラ『おむすび』では麻生久美子が母親役に決定。年齢的にもさほど母親のイメージがない麻生が、どんな母を演じるのかも楽しみだ。

「今後は麻生さん世代がどんどん母親役をやっていくでしょうし、かつてヒロインを演じた方が母親役というのも増えると思う。

 宮崎あおいさんは絶対やりそうだし、石原さとみさんも見たい。母親役へのシフトチェンジは朝ドラが一番いいと思うんです。国仲涼子さんは沖縄を舞台にした朝ドラで。いずれは“おばあ”までやってほしいです(笑)」(カトリーヌさん)

最高だったヒロインの母親TOP10

1位 『ブギウギ』('23年)花田ツヤ(水川あさみ) 89票
2位 『ちゅらさん』('01年)古波蔵勝子(田中好子) 79票
3位 『あまちゃん』('13年)天野春子(小泉今日子) 76票
4位 『おしん』('83年)谷村ふじ(泉ピン子) 64票
5位 『まんぷく』('18年)今井鈴(松坂慶子) 58票
6位 『舞いあがれ!』('22年)岩倉めぐみ(永作博美) 49票
7位 『ちむどんどん』('22年)比嘉優子(仲間由紀恵) 43票
8位 『なつぞら』('19年)柴田富士子(松嶋菜々子) 39票
9位 『ひまわり』('96年)南田あづさ(夏木マリ) 33票
10位 『半分、青い。』('18年)楡野晴(松雪泰子) 26票

カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など

取材・文/蒔田陽平