数々のドラマや映画に出演してきたベテラン俳優の長塚京三さん。プライベートでは個人事務所の女性マネージャーと結婚し、公私共に二人三脚で歩んでいる。終活を意識しているという、シンプルなライフスタイル、そして健康を第一に考えているという暮らしぶりを語った。
「当分、死ぬ予定はないからね(笑)」
181センチのスリムな身体に黒いスーツ姿で撮影場所に現れる。するとそのダンディーさと長〜い脚に、スタッフの女性陣から、「カッコいい!」「俳優さんって、いくつになってもやっぱりスゴイ」と声が上がる。
そんな長塚さんも、現在78歳。人生の晩年をどう考えて過ごしているのだろうか。
「終活を意識する年代なのだろうけれど、特に何もしていません。いつ死んでもおかしくない年ですが、まだ当分、死ぬ予定はないからね(笑)」
その言葉に、かたわらに寄り添う夫人にしてマネージャーの敏子さんも、うなずきながら微笑む。
「晩年が長いのは、いい面も悪い面もある。冬の時代が長くなるってことでもあるから。人生100年時代っていうけれど、それをどう評価するかは、捉え方が難しいよね」
人生の最後に向けて行う準備や活動、いわゆる“終活”。ネガティブな印象もある一方で、残りの人生を豊かにするため、若いころを振り返り、やりたかったことにもう一度挑戦するといった“再春”という前向きな考え方が注目を集めている。
最近、青春の日々を思い起こすような出来事があったという。
「高校のクラス会があって。大ゲンカした記憶しかない友人が、恥ずかしそうに近づいてきて、“(2人の仲を)やり直し、したいよな!?”と言ってきた。実は私も同じように思っていて。大ゲンカして疎遠になってしまったせいで、そいつと一緒ならばできたことができなくなったことも多いはずだよね。仲直りして何を取り返せるわけでもないけれど、やり残してきたことも、これまで生きてきたことの一つの決着。そんなふうに思いましたね」
そもそも、長塚さんの青春といえば、フランスはパリでの学生生活─。
「5年パリで暮らしてね。フランス文学の専門分野を極めるまでには、とても至らなかったけど、日本の大学とはだいぶ違って、試験、試験の毎日でした。20代の多感な時期をパリで過ごせたのは、得難いことでした」
留学中、フランス語教師にすすめられるままオーディションを受け、いきなりフランス映画のメインキャストに抜擢され俳優デビューした長塚さん。現在は二拠点生活をしている軽井沢で、終活ならぬ“再春”しているようだ。