価格破壊の原因は一般女性の“参入”
「帰国前に換金係の剛から、2週間でチップを含んだ金額が250万円とLINEで伝えられたそうです。予想よりもかなり低く、しかもすぐに払ってくれなかったそうです」
ミホさんは結局、手数料を引いて180万円しかもらえなかった。コロナ禍で海外出稼ぎが加速したが、実は30年ほど前から行われていたと、風俗業界に詳しいジャーナリストの酒井あゆみさんは、こう指摘する。
「30年前は、ドバイの石油王が自家用ジェットで、マネージャー同行のAV単体のセクシー女優を迎えに来たものです。金額は1週間滞在で1000万円。そのうちプレイをするのは2~3日。ブローカーにも1000万円が支払われました。ただ売春法違反での逮捕が怖いため、希望者は多くはなかったそうです」
ところが、10年ほど前から一般女性による「ギャラ飲み」や「パパ活」といった個人での“営業”が増えたころから、海外出稼ぎが素人にも広がり、結果、売春の金額も低下していったと酒井さん。
「素人というのは、単体のセクシー女優になれない風俗嬢や、風俗でも稼げないからパパ活をやっている女性たちです。値崩れしたのは、素人が海外売春の後で現地の人と親しくなり、自分たちがエージェントになってから。相場を知らないからどんどん下がり、またワキが甘いから当局にマークされやすくなった」
海外売春のヒエラルキーは、1番人気がグラビアのモデル、次にセクシー女優。その下に素人というランク付けだという。以前はグラビアモデルの相場が2週間で1000万円以上だったが、この1年で半分以下に、さらに単体のセクシー女優でもその半分以下に。その下の素人となれば、相場の下落は言うまでもない。
「2週間で160万円しか稼げなかった女性もいます。しかも客の中国人も含め、外国人男性は日本人男性に比べて性欲が旺盛なので、1回で3~4時間もざら。また日本人女性らは語学が堪能でないため、言いなりにならざるを得ないんです」(酒井さん)
中国人は“オレ様タイプ”がほとんどで、客はミホさんのケースで前述したように薬物中毒者に見える人物も少なくない。身の危険はもちろん、1度でも海外売春で逮捕されると、2度とその国に入国できないというリスクもある。
「海外出稼ぎは恐怖を覚悟して行くのが当たり前。それ以上に、入国禁止のリスクがいちばんこたえるという人もいます」(酒井さん)
売春の取り締まりが厳しくなったアメリカでは、売春を疑われた20代から30代の単身旅行の日本人女性が、空港内で足止めをされることが増えている。特に『シグナル』という、一定の時間がたつとメッセージのやりとりが消えるアプリをスマホに入れていると、当局から目をつけられる。ある旅行関係者は、
「若い女性が単身で旅行する場合、現地の知り合いの名刺を持っていくなど、海外売春を疑われないような準備をするべきでしょう」
と話す。海外売春という違法行為に走る女性が、なぜ増えているのか? 生活の困窮、ホストに貢ぐため……、根本的な問題の解決なしでは“闇”はますます広がっていくだろう。
<寄稿/夏目かをる>