「当時はこうしたハプニングは多々ありました。というのもあのころの歌番組は中継が多く、移動の途中で駅前で歌ったり、ということが毎週のように行われていて、そこでファンにもみくちゃにされることもたびたびでした。いかに当時の危機意識がゆるかったかということ」(木村さん)

「サブスクやネット動画では味わえない臨場感」

『ザ・ベストテン』(TBS系)の『アルフィーファン宅へアポなし訪問』(1984年/5票)も、昭和の時代ゆえのハプニング。アポなしでファンの自宅を訪れるも、ファンは不在で……。コメントにも「生放送でアポなし突撃するとは今では考えられない」との声が。

「家はバレてしまうし人は集まるしで、今なら警察が出動するような騒ぎになる。けれど当時は“面白いからおいしいでしょ”みたいなノリ。怒られるという発想があまりなかった時代」(木村さん)

 近藤真彦との熱愛に怒ったファンが起こしたのが、『中森明菜帰れコール事件』(1984年/9票)。『ザ・トップテン』での出来事で、「近藤真彦のファンは最低だと思った」(北海道・55歳)との声が。

「当時のアイドルファンは団結力が強く、自分たちが悪さをするとアイドルに迷惑をかけてしまうと自制ができていた。でもそれを超えて怒りが出たケース。いかに本気で怒っていたかがわかる」(木村さん)

「あのころ、クソ生意気なガキだった」と当時を振り返った長渕剛
「あのころ、クソ生意気なガキだった」と当時を振り返った長渕剛
【写真】自宅に出入りする有働由美子、独特の私服センスを発揮!

 さて、気になるのが新番組の行方。これからの音楽番組は何を目指していくのだろう。

「今の音楽番組は生放送でお祭り感を出す、いわばミニフェスのような番組作りが定番。ライブで見てSNSで盛り上がってもらえる演出を心がけていて、サブスクやネット動画では味わえない臨場感を作ろうとしています。

 なので作り手側もハプニングは醍醐味のひとつとみなしていますし、一方のファンも熱のこもったパフォーマンスゆえのハプニングは大好物。生で見られてよかったね、と話題にもなる。なかにはそこを狙って、あざとく仕掛けるアイドルも出てくるかもしれません」(木村さん)

 どんなアーティストからどんなアクシデントが生まれてくるか、次なる伝説のハプニング誕生はいかに?


取材・文/小野寺悦子