現役弁護士たちが推す名作ドラマとは?
一方、よかった部門に目を転じると、『99.9―刑事専門弁護士―』('16年ほか TBS系)が最も支持を集めた。本職の目から見ても優れた弁護士ドラマだったようだ。
「刑事裁判を実務に忠実に再現しており、特に尋問においての証言の引き出し方は非常に参考になります。また実際に現場を見たときの違和感が事件解決の糸口になるので、自分の目で確かめることの重要性を教わりました」(前出・高村さん)、
「現実味を持たせながらエンタメ感を盛り込むバランスが秀逸です。深山(松本潤)が被疑者の話に耳を傾け、無罪を勝ち取る姿は尊敬する神山啓史先生に通じ、没頭して視聴しました」(前出・小野寺さん)
「本職の方もドラマの弁護士のやり方を参考にするんですね。『99・9』の深山にもモデルがいたんだと驚きました。神山先生がモデルだから深山だったんですね。
一般の視聴者は、木村ひさしさんのクセのある演出や小ネタに目がいきがちですが、事件や裁判シーンはしっかり作ってあったんだなとあらためて気づかされました」(カトリーヌさん)
弁護士ドラマの名作『リーガルハイ』('12年ほか フジテレビ系)も複数票を得た。
「古美門弁護士(堺雅人)は弁護士倫理的には問題行動が多いが、依頼者の利益のためにここまでやるのはすごい。
法廷シーンでの非常識な主張もそうは思わせない巧みな話術や堂々とした立ち居振る舞いが印象に残った。絶対に相手方になりたくない」(『弁護士法人・響』古藤由佳さん)
そして、意外にも本職から熱く推されたのが司法修習生たちの群像劇『ビギナー』('03年 フジテレビ系)だ。
「20年前のドラマですがDVDを買いそろえるほど大好きでした。元OL、失脚したエリート官僚、子育てママなど複雑な事情を抱えた司法修習生たちが、課題となった事件に対峙していくのですが、彼らが当事者の立場になって考え、悩みながら法律家としての結論を出していく姿に毎回感動していました。
自分が弁護士となった今、依頼人一人ひとりの生きざまを理解していきたいと考えるのは、もしかしたらこのドラマの影響なのかもしれません」(前出・武田さん)、「半人前の司法修習生の姿を通して、法律や法律家を万能な存在ではなく、時に無力でありながらも限られた職域、能力のなかで次善を求め、模索し続ける存在であるという理解が根底に感じられました。
『アンパンは誰が食べた?』の回は貧困問題対策委員会で活動する今の自分の根源にあるような気がしています」(『法律事務所Z』小松新さん)
「私も『アンパン~』の回はすごく好き。生活苦の夫婦の話で、病気で苦しむ妻に夫が『殺して』と言われて……もう号泣必至の名作です。やっぱり、弁護士になる前の司法修習生の物語は、自分の青春を思い出させるのかもしれませんね」(カトリーヌさん)
そして、『離婚弁護士』('04年ほか フジテレビ系)、『弁護士のくず』('06年 TBS系)、『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』('22年 TBS系)も票を得た。
「『離婚弁護士』は当時高校生で、離婚がこんなに複雑な問題だと知らなかったので勉強になった。今になって思い返すと特別代理人制度など結構深いところまで掘り下げていたドラマだと思う」(前出・古藤さん)、
「いわゆるマチベンをテーマにした『弁護士のくず』。軽薄な弁護士として振る舞いながらも、案件や依頼者に向き合う姿は弁護士として参考にすべき点がある」(前出・今井さん)、
「『石子と羽男』で描かれる案件は、日常の中で起こりうることばかりなので、自分も無意識のうちにやってしまっているのではないかと思わせる。もし訴えられた場合の対抗手段として、弁護士というのは実は遠い存在ではないと感じさせてくれます」(前出・高村さん)