息子が小学生のときに親戚から「この子頭いいですよ」と言われたそう(コウメ太夫さん提供)
息子が小学生のときに親戚から「この子頭いいですよ」と言われたそう(コウメ太夫さん提供)
【写真】俳優としても活動する素顔のコウメさんや幼少期の長男

 休日には2人で郊外へドライブしたり、鉄道博物館やアンパンマンミュージアムに出かけたり。子育ての大変さよりも、一緒にいられるうれしさのほうが大きかったという。

「仕事が激減して落ち込んでいた時期だから、息子といるだけでこちらが力をもらえたし、彼のために頑張らなきゃとやる気が湧いたりもしました。親がどんな思いで自分を育ててくれたのかとか、いろいろ気づきもありましたね」

「勉強しろ」と言ったことは一度もない

 もちろん、うれしい、楽しいことばかりではない。幼稚園から呼び出されて困ったこともあった。

「僕のネタである『チクショー!』を、園で叫び続けているからやめさせてほしいと言われたんです。それに、女性の先生のお尻を触っているので注意してほしいと。おばあちゃんがいてくれるとはいえ、やっぱり本能的に母親とのふれあいを求めているんだろうなと感じましたね。いろんな事情があって、彼は母親と会えていなかったので」

 一方で自身は、7歳のときに父親を事故で亡くしている

「小さかったけど、記憶はちゃんとあるんです。一緒に海に行ったときに逆立ちしていた親父の姿とか、僕が砂浜で迷子にならないよう、名前や電話番号を書いた札を首からぶら下げられたこととか。ただただ、優しい父親でしたね。あのままずっと親父に甘やかされ放題で育ったら、僕はロクな人間になってなかったんじゃないかって思うくらい」

 父親亡き後は、教育熱心な母親に育てられた。だが勉強が大の苦手で、学校の先生が何を言っているのかすらよくわからない。にもかかわらず、将来は医師を目指すよう母親に言われ、7人もの家庭教師をつけられた。

「医師や教師になっている成績優秀な親戚が多かったんです。でもね、僕は本当に勉強ができなかったんですよ。家庭教師が『こんな子は見たことない』って、さじを投げるくらい。なんで親は気づいてくれねぇんだよ、って思ってました。それがすごく嫌だったから、僕は息子に勉強しろって言ったことは一度もないです」

 そんなコウメ太夫の息子は父親とは正反対。小学生のころから勉強がよくできた。将棋に夢中になり、近所の将棋サロンにも足しげく通った。その手筋を見た親戚から「この子はすごく頭のいい子だね」と言われたことも。

「もともと教育熱心な僕の母が、中学受験させてみたらどうかと。息子に聞いてみると、やってみたい!  と言うんです。それで高学年くらいから塾に通い始めました」

 いくつかの学校を受験し、難関の私立中高一貫校に見事合格。入学後は先生にかけあって将棋部を設立するなど、充実した学生生活を送っている。

「僕が小学生のころは、先生の言うことはまったく聞かないし、おしゃべりでうるさいし、おふくろはしょっちゅう学校に呼び出されていました。でも息子は、好きなことはとことん突きつめるし、我慢強いし、リーダーシップもある。僕とは大違いですね」

 最近はドラマなど、素顔でのテレビ出演も増えているが、息子の友人に自身の存在を知られているかどうかはよくわからないらしい。

「学校の先生はもちろん知っています。友達も知らないはずはないと思うんだけど、彼はあんまりそういう話をしてこないんです。小さいころこそ僕のモノマネをしたりしていたけど、大きくなるにつれてほぼ興味がなくなってきたみたい。お笑いも全然見ないし、とにかく驚くほど数学が大好き。高校に進学してからは新たに数学部に入部しましたし、将来も数学に関する仕事に就きたいと言っています。それってどんな仕事なの? そんな仕事あるの? って、僕はよくわからないんだけど(笑)」