今のところは、反抗期らしいものもないという。

「4、5年前に一度だけ、大ゲンカしました。あまりにも態度が悪かったのでかなり強く叱ったら、翌日、彼から謝ってきましたね。それ以来、大きなケンカはないです」

将来ちゃんと自立してくれればいい

 怒るときはしっかりと怒ると決めているが“こういう父親でありたい”という理想像はない。

「だって僕は僕だから、僕なりの親父にしかなれない。同じように息子に対しても、将来こうなってほしいという理想はないです。人はそれぞれ自分に合ったところで生きていくものだと思うから、興味のないことを無理にやったり、やらせたり、そんなの時間がもったいない。人に迷惑かけない限り、彼がやりたいことを貫いて、将来ちゃんと自立してくれればいい。ただその思いだけです」

 親は手や口を出しすぎず、子の決断を信じて見守るべし。わかっちゃいるが世の親たちがなかなかできないことを、ごく自然にやってのけるコウメ太夫。父と息子の二人三脚は、これからも続いていく。

取材・文/植木淳子