1982年東宝50周年記念映画『海峡』でスクリーンデビュー。さまざまな作品で活躍し、'80年代は大河ドラマでも常連の名俳優、橋爪淳。NHK『光る君へ』では25年ぶりの大河ドラマ出演を果たすものの、人知れずステージ3の大腸がんと闘いながらの撮影だったという―。
1年くらい前から血便が出てヤバイ状態だった
「検査を受けた時点で、すでに予感はありました。だから告知されたときも“やっぱりな”という感じで、それほどショックはなかったですね」
そう話すのは、俳優の橋爪淳(63)。4月3日、自身のSNSで大腸がんが見つかったことを告白。病室での写真をアップし、大きな反響を呼んだ。
「実はもう1年くらい前から血便が出ていて、かなりヤバイ状態だなという自覚はありました。ただ『光る君へ』の出演が決まっていたので、とりあえず撮影が終わってから検査しようと思って……」
NHK大河ドラマ『光る君へ』に、関白・藤原頼忠役で出演。昨年7月から撮影に入るも、体調はすぐれず、体力は限界にきていたと振り返る。
「撮影後半は妻に車を運転してもらって現場に通っていました。そのころには血便もひどく、便も漏れがちになっていて。ただ衣装は一度着たら簡単には脱げないので、ずっとおしめをしていましたね」
頼忠は政治力を持てず、失意のうちに関白を辞し息子に託す。頼忠の息子・公任役を演じたのは町田啓太(33)。くしくも自身の病状は役に重なり、また2人の関係性に反映された。
「立っているのもキツくて、撮影の合間はセットの階段に腰かけていました。本番で撮影場所まで5m歩くのも大変なくらいです。そうしたら啓太さんがすっと手を取ってくれて。頼忠が関白を辞める決心をしたのは、自分が病気で先が長くないのがわかっていたから。その思いを自分の中に落とし込み演じるようにしていました。そんなとき啓太さんが肩を支え、手を添えてくれた。そこで絆が深くなって、息子に見えた。啓太さんにはとても感謝しています」
頼忠の死は思いがけず早く訪れた。昨年11月に撮影を終え、病院へ駆け込んでいる。
「これも不思議なタイミングでした。妻が毎年大腸の内視鏡検査をしていて、近所の病院に予約を取ってあったんです。急きょ私が代わりに検査を受けさせてもらうことになりました。そのころには体重も7kg近く落ち、下血もかなりひどくなっていたので」