今、苦しんでいる子どもたちに

講演活動中の歌川さん。「どんな地方でも呼ばれれば必ず行きます」と話す。子どもたちに対しては真剣だ
講演活動中の歌川さん。「どんな地方でも呼ばれれば必ず行きます」と話す。子どもたちに対しては真剣だ
【写真】25年連れ添うパートナーのツレちゃんとのツーショット

 さて現在の歌川さんは、大動脈解離で九死に一生を得てから、ますます精力的に活動中だ。

 手術後の回復の早さにびっくりしたと語るのは清水さん。

「大手術で心配だったんですけど、その後お見舞いに行ったら普通に歩けてるから、やっぱり彼のトゥーマッチなところは生命力にもつながってるのかなと驚きました。そして、やっぱりまだまだ彼には使命があるんだなと。彼と知り合っていなかったら人生で笑った量が1割少なかったと思いますね」(清水さん)

 また、2年前に医療・介護施設のリノベーションなどを手がける『ヒーリング・デザイン』という会社を起こした青木さんは、歌川さんに仕事を手伝ってもらっている。

「うたちゃんはウェブ制作や動画などのスキルがすごいんです。会社のホームページも彼が作ってくれたし、僕にないものを持っている。彼がいないと成り立たないくらい、なくてはならない存在です」(青木さん)

 そして、とっておきの話を青木さんが教えてくれた。歌川さん、ツレちゃん、清水さん、そして娘さん2人を含む青木さん一家のグループLINEがあり、そのグループ名は“家族”。

「僕にとって、うたちゃんは本当に家族なんです」(青木さん)

「血のつながりもないし、会社の同僚でもない。友達やパートナーのつながりって、気持ちだけじゃないですか。だからこそ、時間の長さには意味があると思う。いろいろあったけど、自分はかけがえのないものをもらえたと感じるんです」

 と語る歌川さん。母や自分をいじめたクラスメート、黙認していた教師に対する今の気持ちを聞くと、「昔のこと、としか思わないよね」との返事が。

「虐待は絶対に許してはいけないことだけど、母個人のことはもう別にね。クラスメートや教師も、たとえ今、謝りにこられても面倒くさいとしか思わないな。それくらい年をとった。でも、今、生きている子どもたちが同じ目にあったら、私は怒り狂います。きっと当時の自分の怒りも相まって。だから、怒りは自分のためじゃなく、社会のものになりました」

 “人が好き”という歌川さん。最後にその源泉を尋ねると、

「持って生まれたものとしか言えないなあ。動物が好きな人、機械が好きな人、みんなそれぞれ好きなものがあるじゃない。私は人とコミュニケーションをとるのが楽しいから。あと、動物も好きだけど、やっぱりどうしても男の子のほうが好きだわ(笑)」

 強く、愛情深く、そしてサイコーにキュート。ポジティブパワー全開で日々を生きる歌川さんは、今日も元気に周囲を明るく照らしている。

<取材・文/今井ひとみ>

いまい・ひとみ ライター。エンタメ誌編集部、『週刊女性』編集部を経てフリーに。多くの著名人の取材、人物ルポをこなす。