「先輩の議員から、『小池さん、政治の世界というのは嫉妬の世界なんだよ。うまくいく人は必ず足を引っ張られる。特に女性は。そのつもりでいたほうがいい』と言われました。時には嫉妬され、足を引っ張られることもあるけれど、そこからまた切磋琢磨していく必要があります」

 切磋琢磨し、壁にぶつかってしまったときは?

「迷ったときは前に進む。もしくは、とにかく寝る。睡眠は重要ですから(笑)

 男社会の中でも、ファッションやメイクは常に完璧で、女性らしい華やぎで存在感を放ってきた。それも女性リーダーとしての心意気だろうか。

「いやいや、そこも意識していなくて、むしろ楽しんでいます。母が遺してくれた着物をリメイクしたジャケットも愛用しています。だって、もったいないじゃない? ただ、ずっとハイヒールで駆け回ってきたので、外反母趾が悩み。最後のご褒美が外反母趾かと思って(笑)

東京都知事になり、数多くの政策を実現

 2016年、女性初の都知事に就任。女性の活躍を都政の重要課題と位置づけ、さまざまな政策を打ち出してきた。子どもを望む女性のため、不妊治療費の助成を拡充し、昨年からは、都道府県で初となる卵子凍結への助成を開始。

「チルドレンファースト」を掲げ、0歳から18歳の子ども1人あたり月5000円を支給する「018サポート」も今年で2年目を迎えた。

「私自身もう一心不乱に働いてきて、その間(議員時代)に子宮筋腫で全摘出をする経験もしました。であるならば、女性が子どもを産み育てられる環境を整えることこそが私の役目だと思って、一生懸命取り組んでいるんです」

 女性リーダーとして、職場環境の改善にも尽力する。コロナ禍が日本を襲う前からテレワークを推進し、都内企業のテレワーク導入率は、2017年の7%から2023年には60%に上昇。都庁では女性管理職を積極的に起用し、現在約2割。局長級への登用も進め、過去3年でおよそ倍増させた。ただし、まだまだ理想には程遠いよう。

東京を世界一のまちにすることが目標と語る小池百合子都知事 撮影/北村史成
東京を世界一のまちにすることが目標と語る小池百合子都知事 撮影/北村史成
【写真】母の着物をリメイクしたジャケットを着こなす小池都知事

女性議員、女性経営者は非常に少ないと思います。社会の構成を考えると、もっと女性が声を上げていく必要があります

 例えば、都議会では現在119人中女性が37人(31%)と都道府県議会でトップである一方、衆議院における女性議員比率は11%にとどまる。

 女性としての自身を俯瞰し、時流を読み解き、女性初の都知事として2期8年の任期満了を間近に控える。3選を目指し、7月7日投開票の都知事選への立候補を表明した。

 東京はどこへ向かうのか。最後に、彼女の目指すものを聞いた。

「東京を一番にしたい。世界の競争はすごく激しい。私は、都市はマグロだと思っています。常に動いていないといけない。その中で、経済、産業、子育て、そして歴史、文化に富んだ東京をもっと磨き上げたい。都民の生活や安心、安全を守り、東京をいつも世界一のまちにしていきたいと思っています


取材・文/小野寺悦子