奏者の異色の経歴
「地元・ロサンゼルス出身で、小さいころから野球やアイスホッケーが大好き。ドジャースのファンだったようです。高校まではクラシックピアノを習っていましたが、野球場のオルガン演奏にずっと憧れていたため、卒業後はバイトをしながら求人を待っていたそう。こうした職業に就く人は音楽系の大学を出ている人が多いので、ルールさんは珍しいタイプです」
大学には進まず、スポーツの現場で腕を磨いてきた“異色の経歴”の人物のようだ。
「ロサンゼルスに本拠地を置くプロアイスホッケーチームの『キングス』で1989年から演奏を始め、プロバスケットボールチームの『レイカーズ』で演奏した期間も。そうした中で、どうやったら観客の心をつかむことができるのか、試行錯誤してきたようです。現在も、野球とシーズンの時期が違うため、キングスでの演奏も続けています」(前出・在米ジャーナリスト、以下同)
憧れていた球場での“就職”が叶ったのは2016年のこと。
「前任者は28年間と歴代最長でした。引き継ぎの際には“自然の中で弾けばいい”と助言されたようです。オルガンのほかに電子ドラムを使うのが彼の特徴のひとつ。バスケなどの屋内競技には向いていないようですが、屋外の野球場ではドラムを使うことで迫力のある音楽になり、観客の反応もよかったそうです」
彼はかなりの勉強家で、ドジャースに新たな風をもたらしたという。
「ルールさんの前任者が奏者を務めていた野茂さんの時代には、インターネットも発達しておらず、日本の曲を調べるのは大変でした。そのため、アメリカでも『スキヤキソング』としてヒットしていた『上を向いて歩こう』がよく流れていましたが、日本の曲はそれくらいでした。ルールさんは、どんどん新しい曲を取り入れようと、SNSなどで“盛り上がる曲はないか”といつも研究していて、日本の音楽では『ゴジラ』や『進撃の巨人』、『セーラームーン』、『ドラゴンクエスト』の曲など、バリエーションが増えてきています」(梅田さん、以下同)
今回の『VIVANT』は、大谷が知っているからという理由だけでもないようだ。
「大谷選手が見ていた日本のドラマの曲とは認識していたようですが、純粋に音楽としていいと思ったので演奏したそうです。これまで日本の曲として定番だった『上を向いて歩こう』やアニメの曲とは雰囲気も違い、荘厳な曲。もしかしたらアメリカの野球場でもこの曲が流行るかもしれません」
美旋律で観客を盛り上げ、大谷をバックアップする体制は整っているようだ。