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ー 人間でいうと90歳の長寿でのんびり余生を過ごす

 二本足ですっくと立つ、なんとも愛らしい姿で一世を風靡した、千葉市動物公園のレッサーパンダの風太。ブームが最高潮だった2005年には、缶コーヒーのCMにも出演。ぬいぐるみやフィギュアなどさまざまな商品が飛ぶように売れた。

人間でいうと90歳の長寿でのんびり余生を過ごす

「7月5日の誕生日で21歳になった風太は、人間でいうと90歳ほど。国内の動物園で飼育されているレッサーパンダでは最高齢となりました」

 と、千葉市動物公園飼育員の石田郁貴さん。

 高齢のため、今では立つことはなくなった。四足歩行のレッサーパンダが、風太のように二足で頻繁に立つことは珍しい。

 なぜ立つようになったのか、理由については定かではないが、視界に入らないところに気になるものがあり、なんとかして見ようとしたことがきっかけで立つクセがついたのではないかとも推測されている。

「風太の子孫は玄孫も含めて46頭います。当園では孫のメイタ、みい、ゆうを飼育しており、すべて立ち上がることはできますが、風太のように頻繁に立つ個体はいませんね」(石田さん、以下同)

 レッサーパンダの寿命は15~17年。風太の長寿の理由について、石田さんは「おそらく、よく食べてよく寝ているからではないか」と考えている。人間でいえば卒寿に近い風太。2018年には白内障を患い、右目が見えなくなった。

 2020年には歯槽膿漏が広がり、抜歯や膿を取り除く手術をして5か月ほど公開を控えた。6月も体調を崩し、室内で過ごしていたが、最近では復調し室内と屋外を自由に出入りできるように。

「警戒心が強い風太でしたが、年齢を重ねて性格が穏やかになったと感じます。これからも風太の体調を第一に考えていきたいと思っています」

 昨年には、風太が20歳の記念すべき年を迎えるにあたり、レッサーパンダの園内飼育環境向上を目指したクラウドファンディングを実施。目標金額500万円をはるかに上回る2300万円が全国から集まった。

「ご支援のおかげで、風太の展示場に温冷送風機を3台設置できました。そのほかにも室内展示場に特殊遮熱フィルムを張りつけたり、植樹によって木陰の範囲を増やしたりと、猛暑対策を行うことができました。現在も自動ミスト設置の工事中です」

 レッサーパンダの長寿世界一記録は、2015年に24歳で死んだ雄の「楠」。人間でいうと108歳で、北九州・到津の森公園の人気者だった。この記録にあと3年で並ぶ風太。見守りを続ける来園者らは「このまま元気に、穏やかに余生を過ごしてほしい」と話している。

取材・文/植木淳子