毎月100万円かかるも「がん保険は不要」と語るワケ
ステージが進むにつれ、治療費も莫大になるといわれるがん。それゆえにがん保険も根強いニーズがある。だが森永氏は著書『がん闘病記日記』において、がん保険は不要と明言している。
「健康保険が適用される標準治療のなかでがんと向かい合うのであれば、【1】自己負担3割、【2】高額療養費制度、【3】医療費控除の優遇策により、がん保険は不要だと思います。
必要になるのは、私のように原発不明などの特殊ケースと、どうしても延命がしたい場合だけです。私の場合、前述したオプジーボの治療は保険診療ですが、併用する血液免疫療法は自由診療で保険適用されず、個人でがん保険に加入していなかったため、毎月預貯金が100万円ずつ減っています」
昨年11月に余命4か月との通告を受けるも、冷静に受け入れ、終活に取り組むなど前を向き続けてきた森永氏。何が折れない心の支えになっているのだろうか。
「ちょっと上から目線に聞こえてしまうかもしれませんが、私は、老後の生きがいを確保するために必要なのは、『教養』だと考えています。
例えば、休日にテーマパークに出かければ、誰でもエンターテイメントを満喫できますよね。楽しめるように作られているのだから当然です。しかし、1日楽しむには1人1万円以上のコストを負担しなければなりません。
一方、大自然のなかで休日を過ごして楽しいかどうかは、その人の教養レベルに大きく依存します。雲の名前、鳥の名前、植物の名前を知っているかどうか。どこに湧き水があるのか、どこで魚釣りができるのか、どこに秘湯があるのか。それを知らなければ、楽しくないのです。それは人生も同じではないでしょうか。
そういった、お金をかけずに生きがいを見つけられる教養さえあれば、老後でも人生を楽しめる仕事はいくらでもある。仕事といっても、お金を稼げることばかりではありませんが、私はむしろ今、そういう仕事に全力投球しているため、不安や恐怖を感じる暇がないのです」
「がんというのは幸せな病気だ」と語る和田秀樹氏、小倉智昭氏の言葉を挙げ、森永氏もこれに同意する。その理由は、突然死することが少なく、人生の幕引きを整える時間を確保することができるからだ。
「私は、『いつ死んでも構わない』とは考えてはいません。しかし、いつ死んでも悔いのないように、楽しい仕事だけを続け、自分が正しいと思うことだけを言い続けています。私にとって悔いのない人生とは、真実を伝え続けることだと考えています。これはジャーナリストだった父からの『教訓』かもしれません」
誰でも人生の最期を迎える日がやってくる。そのときをどう過ごすのが幸せなのか。愛煙家で知られる森永氏は、人生の最期を次のようにイメージしているそうだ。
「大自然のなかで、最後のたばこに火をつけて、肺細胞の一つ一つで味わいながら死ねたら、最高だと思います」