健全なブリーダーは、オークションやペットショップに子犬や子猫を卸すことはありません。
心身ともに健康な親から生まれた子犬や子猫は、健全なブリーダーに見守られながら、清潔な環境で親や兄弟姉妹とともに過ごし、社会性を身に付けてから飼い主のもとに直接譲渡されます。譲渡後も、その子犬や子猫の生涯にわたりサポートしていきます。
それは、生み出した命に生涯かかわっていくという深い愛情と責任があるからです。
近年は、健全なブリーダーが軒を連ねていた「紹介サイト」にも悪徳ブリーダーが流入しています。そこから迎えた飼い主とのトラブルも多く発生していて、もはやオークションやペットショップの大量生産と展示販売の問題だけにとどまらない状況になっています。
悪徳ブリーダーがのさばる根本要因は、いくつかの要件はあるものの、誰でも容易にブリーダーを名乗ることができる現在の登録制度にあります。そこでは「繁殖の専門知識」や「命に対する責任や倫理」「動物に対する愛情」などは問われません。
動物の権利や命を守るためには、悪徳ブリーダーを排除する仕組みの構築が必須です。例えば、ブリーダーに免許制度を導入するなど、ふるいにかけてその質を向上させる必要があります。
近隣住民や飼い主の「目」が果たす役割
悪徳ブリーダーの排除には、「近隣住民の目」も大きな役割を果たします。臭いがひどい、鳴き声がすごい、犬や猫に暴行を加えている、死体を遺棄している……など、問題にいち早く気付くことができるのは、近隣住民です。
何かおかしいと感じたら、管轄の保健所や動物愛護センターに通報しましょう。声を上げることで、近隣住民の生活を守り、同時にそこにいる犬や猫の命を救うことになるのです。
もちろん「飼い主の目」も重要です。
例えば、ブリーダーから直接、子犬や子猫を譲渡してもらう場合、事前に犬舎や猫舎を見学すると思います。その際、玄関の外まで糞尿のニオイがする、建物の周辺にも犬や猫の抜け毛が散乱している、窓越しにケージが2段3段と積み上げられているのが見えるなど、明らかに劣悪な環境とわかる場合は見学・購入を断り、管轄の保健所や動物愛護センターに通報しましょう。
飼育環境や親犬・親猫を見せてもらえない場合は、それらに問題があることがほとんどです。通された場所がいくらきれいでも、それは表向きの姿。そうしたブリーダーから迎えることは避けたほうがよいでしょう。
動物愛護の精神が広がるなか、もはや大量生産・展示販売という業態はそぐわない。ペット業界全体がそれを深く認識し、変わるべきときが来ているのです。
阪根 美果(さかね みか)Mika Sakane
ペットジャーナリスト
世界最大の猫種である「メインクーン」のトップブリーダーでもあり、犬・猫などに関する幅広い知識を持つ。家庭動物管理士・ペット災害危機管理士・動物介護士・動物介護ホーム施設責任者・Pet Saver(ペットの救急隊員)。ペットシッターや保護活動にも長く携わっている。ペット専門サイト「ペトハピ」でペットの「終活」をいち早く紹介。豪華客船「飛鳥」や「ぱしふぃっくびいなす」の乗組員を務めた経験を生かし、大型客船の魅力を紹介する「クルーズライター」としての顔も持つ。