料理女、私を見て女、やりすぎ女
ここからは、吉田さんとともに歴代ドラマにおける印象的なヤバイ女たちを振り返っていこう。
「ヤバイ女にはいろんなタイプがあって。ひとつは“料理系女”ですね」
古くは『東京ラブストーリー』(1991年)のおでん女・関口さとみ(有森也実)や『ホタルノヒカリ2』(2010年)でおはぎを作って持ってくる浅田小夏(木村多江)、『あなたには帰る家がある』(2018年)の茄子田綾子(木村多江)も完璧なお弁当をバスケット入れて持ってきた。『リコカツ』(2021年)の一ノ瀬純(田辺桃子)は筑前煮、『こっち向いてよ向井くん』(2023年)の福田芽衣(穂志もえか)は時間も手間もかかるアイシングクッキーを作って宣戦布告。
「料理をしれっとさらっと作ってくる女は警戒してしまいますね(笑)。だいたいヒロインとパートナーがうまくいっていない絶妙のタイミングですし。もちろん善意はあるんだろうけど、“私はできる感”があざとくて気持ち悪く感じますよね」
お次は“承認欲求強すぎ女”。
「『セカンドバージン』(2010年)の鈴木万里江(深田恭子)は夫(長谷川博己)に振り向いてほしくて自殺未遂のようなことをしたり。『ホリデイラブ』(2018年)の井筒里奈(松本まりか)は既婚男性(塚本高史)と1度関係を持った後、行動がエスカレート。独占欲や承認欲求が強い“私を見て女”というか。行動が奇に走る人はマズイですよね(笑)」
“私を見て”系でありながらも、演出上の“やりすぎ女”もいる。
「ちょっとコメディーになっちゃうやつ。『奪い愛、冬』(2017年)の森山蘭(水野美紀)といえば、夫(大谷亮平)とヒロイン(倉科カナ)の浮気現場のクローゼットからバーンと出てきて“ここにいるよぉ~”。みんなびっくりでしたね(笑)。『M 愛すべき人がいて』の思わせぶりな姫野礼香(田中みな実)は革の眼帯がみかんの皮のようでした(笑)。どっちも、男性に怪我を負わされたというバックグラウンドがあり。その原点は多分『スチュワーデス物語』(1983年)の新藤真理子(片平なぎさ)なんですよね。“浩”って手袋を外すと義手。身体に残った障害を一生罪悪感として背負わせるみたいな」