毒にも薬にもならない無難な動画……

 そんな佐々木希が、なぜ芸能人YouTube進出ブームからかなり遅れたこのタイミングで、チャンネル開設したのか。

 それは、ネット上での渡部の好感度が回復しつつあることが無関係ではないだろう

 渡部は地上波テレビに出演するとまだまだバッシングが多い様子だが、ネットの配信番組への出演はだいぶ好意的に受け止められている。こういった現在のタイミングであれば妻の佐々木がYouTubeデビューしても、渡部アンチからの攻撃は少ないと判断したのかもしれない。

 そう考えると、なかなか秀逸なタイミングに思える。

 ちなみに初投稿となった1本目の動画は、忌憚なく言って毒にも薬にもならない無難な内容だった。

 子どもを寝かしつけた後の自宅で撮影しており、ラフなTシャツ姿でリラックスした佐々木希が、ワインを飲みながら一人語りする約13分半の動画。

 おのずと自宅の一部が公開されており、子どもたちが遊んでいたオモチャが散乱しているなど、プライベートが垣間見えたのでファンにとっては見応えがあったのかもしれないが、話している内容はおそろしく薄い。

素を見せているようで見せていない?

 動画のなかで、YouTubeを始めようと思ったきっかけのひとつとして、友人から「のんちゃんの素がおもしろいからみんなに見せたほうがいいんじゃない?」と言われたことがあったと語っていた。

 しかし筆者の目からは、この動画で彼女が本当の“素”を晒しているようにはとても見えなかった。散らかった部屋も、ラフなTシャツ姿も、初の動画撮影に戸惑う様子も、“素を晒している風”に演出し尽くされているように感じたのだ。

 一言でまとめると、“あざとい動画”という印象。

 よくも悪くも隙がなく、完璧にセルフプロデュースされている。

 “見せること”に慣れているし、“見られること”が大好きなのだろう。

 だが、佐々木希のYouTubeデビュー1本目の動画としては、これが大正解だったに違いない。過不足のない、ファンが望んでいた最大公約数の内容になっていたと思うからである。

 もしこの動画で新規ファンを獲得しようと思っているのだとしたら計算間違いしている気がするが、いまいる既存ファンに喜んでもらい、さらに好きになってもらうためのコンテンツとしては満点だ。

 ――芸能人のYouTube進出ブームからかなり遅れたこのタイミングに、この内容の動画でデビューするというところに、佐々木希の“芸能界サバイブ能力”の高さが垣間見えた気がする。

堺屋大地●コラムニスト、ライター、カウンセラー。 現在は『文春オンライン』、『CREA WEB』(文藝春秋)、『smartFLASH』(光文社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『日刊SPA!』などにコラムを寄稿。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。公式Twitter:https://twitter.com/sakaiyadaichi