家庭でも職場でも男性が優位だった昭和、そして平成の時代に、多くの女性に夢と勇気を与えた向井さん。しかし令和となった現在も、世界基準で見ると日本の女性の社会進出は特に遅れているように見える。

一人ひとりが感じる幸福度のほうがずっと大切

 例えば、世界経済フォーラムが6月に発表した最新の「ジェンダーギャップ(男女格差)リポート」でも、日本は146か国中118位だった。この結果を向井さんはどう見るだろう。

この指数は女性政治家や女性管理職の比率などを鑑みて算出されていると思いますが、それだけで女性の能力は測れないと私は思っています。というのも、日本ではアメリカなどと違って多くの家庭で女性が家計管理を担っていますよね。データには表れていない部分で、実は女性の影響力がとても大きいんです。

 社会においても、激務のなかで管理職になるより、プライベートも楽しみたいからあえて出世の道を選ばない女性もいます。自分自身でそういった人生の選択ができる日本女性の地位が、ほかの国に比べて低いとはいえないはず。このようなランキングだけでは、女性の社会貢献度を正しく測ることはできません。それよりも、一人ひとりが感じる幸福度のほうがずっと大切だと思っています

 向井さんが宇宙飛行を果たしてから約30年。2021年には実業家の前澤友作氏らが日本の民間人として初めて国際宇宙ステーションに滞在した。民間の宇宙ビジネスが成長を遂げた今、向井さんには新たな夢がある。

いつか月に行きたいと思っているんです。定年してリタイアした方たちが海外旅行や世界一周旅行をするのと同じ感覚で、私は月に行きたい(笑)。着陸が無理なら遊覧飛行でもいいので、月から地球を見たいですね

 72歳となった今も、東京理科大学の特任副学長を務めるなど第一線で活躍を続ける。そして、月旅行の夢も決して諦めない。向井さんの姿はあのときと同じように、私たちに夢と勇気を与えてくれる。