9.男女の役割への固執
「65歳になったら男女の役割分担をいったんクリアにしてみては」
と、越原さん。65歳となると多くの人がリタイアし、夫婦の関係性や社会とのつながりもまた変わる。
「夫だから、妻だから、ということからお互い解放されて、働きたいほうが働けばいいし、できるほうが家事をすればいい。熟年離婚を考えていた夫婦で、立場が変わったことで気持ちがわかり合えるようになった、というケースもあります」
そこで大切なのが、お互いの財布の中身を把握すること。
「お金の動きを知るためにも、財布の中身はそれぞれ打ち明けるべき。お互いどれだけあってどれだけ使えるかを共有しないと、この先立ちゆかなくなってしまう。財布の中身がわかれば、生活の彩りに使えるお金も自然と見えてくる。
例えば妻は化粧品、夫は音楽と、これは譲れないというものもあるでしょう。またそれを互いに許すことで、ちょっとしたゆとりも生まれるはず」
10.ネガティブ思考
「ポジティブ思考のすすめはよくいわれる話ですが、これは長寿の秘訣でもあります」
と平松先生。そこには高齢者ならではの思考傾向があるという。
「高齢者はたいてい自分に自信がある方が多い。自分は有能だと過信するくらいの方もいますが、それはいいことです。有能な自分を大切にして、健康に気をつけたりもして、その結果長生きをする。つまり、高齢になると有能感が増しているというより、有能感が高い方が生き残っているのです」
しかし、長年かけ根づいたネガティブ思考をただすのは難しい。高齢者がポジティブになるための秘策を聞いた。
「おすすめは植物を育てること。ある研究では、植物を育てている高齢者とそうでない人を比較すると、育てている人のほうが長生きするという結果が出ています。なぜかというと、自分がした努力に対してちゃんと成果が出るから。
成功体験が得られ、自分がやったことが社会に影響を与えている、自分が役に立っているという自己効力感が生まれてくる。健康で長生きするためにも、高齢になったらポジティブ思考を心がけましょう」
お話を伺ったのは……
平松 類先生●二本松眼科病院副院長。眼科専門医、医学博士。目の健康や、患者と医師のコミュニケーション、高齢者特有の症状や悩みなどをテーマとした講演・執筆を手がけ、テレビや新聞などのメディア出演も多い。YouTubeで「眼科医平松類」として情報発信も行う。『「老害の人」にならないコツ』(アスコム)
越原市美さん●ライフデザインラボ・オリーブ代表。CFP(R)認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、マイアドバイザー(R)ドコモ社内ベンチャー第1号として両立支援情報提供会社「株式会社ダブルスクエア」代表を務めた。現在は独立系FPとして50代前後をメインにライフプラン等のアドバイスを行う。
取材・文/小野寺悦子