定子の苦悩を書き残すわけがない

「私は今回、定子さまを“推し”と解釈しています。“強火の定子担”です」

 一条天皇(塩野瑛久)の中宮・定子(高畑充希)に仕えた清少納言。初対面の際、思わず漏らした言葉は“きれい……!”。SNSでは《オタクの気持ちがわかってる》《まさにあれです》など共感を呼び、称賛された。

一条天皇に彰子(見上愛)が入内した6日後、定子は皇子を産んだ。その翌年、定子は逝去(27回)
一条天皇に彰子(見上愛)が入内した6日後、定子は皇子を産んだ。その翌年、定子は逝去(27回)
【写真】「生まれ変わり」と言われるほど称賛されるウイカの清少納言

「音にするなら“ふわぁぁぁぁ”(笑)。みなさんもあそこに座ってみてください。ああなりますから(笑)」

 定子の実家・中関白家のいいときも、そうでなくなってからも。忠実に定子に仕え続けた清少納言。『枕草子』は、生きる気力を失った定子に再び笑ってほしい。そんな健気で一途な思いでしたためられた。まひろの感想は“光の部分だけでなく、影の部分も読みたい”だったが、

「言いたいことはわかる、ドキュメンタリー性を持たせるならわかるけれども、『枕草子』は定子さまを元気づけるために書き始めたものだから。どれだけ悲しい思いをして、歯を食いしばられてきたか、清少納言は知っている。

 定子さまがそれを表に見せず堪えてきたことを、書き残すわけがない。現代のアイドルと一緒で、その裏側を見たくない人もいらっしゃいますよね? やはりその“裏の部分”は推す側にとって必要ないと彼女は考えたんです」

 そんなふたりだけの宝物は次第に役割に変化が。一条天皇の心を定子に引き留める鎖になればと願うようになり、

「定子亡きあとも“彼女がいかにすごかったか”を書き続ける。それが自分の最後の使命だと思ったんでしょうね。そんなふうに命がけで書いた作品が1000年後まで残っている。本当にかっけー!と思います」