中松さんは、自らの食事を35年にわたって撮影し続け、身体の変化を詳細に分析。その成果が認められ、'05年にはイグ・ノーベル賞(栄養学賞)を受賞した。テーブルに置かれたお茶について、話を続ける。
100歳までに実現したい28の項目
「これは『20 TWEN TEA(トゥエンティー)』といって、さまざまな効能を持つ薬草や漢方など20種類を混ぜたお茶です。こういったものを摂取しているからこそ、私は元気なんです」
白寿に迫る年齢を迎えているとは思えないほど、一つひとつの言葉によどみはなく、はっきりと記憶をたどりながら話す。
「年を取るのではなく、経験を積んでいると考えているんですね。ですから、年寄りではなくて、私は自分のことを“超長経験者”だと思っています。こうやって言葉を発明するだけでも、頭を使うことにつながる。経験というのは財産ですよ。超長経験者の存在は、それだけで貴重ですからアーカイブ化して後世に伝えます」
これまで3900以上もの発明をしてきた。だが、発明の火が消えることはなく、「100歳までに実現したい28の項目がある」と語る。
「選挙でも公約した『ウクルマ』や『ドクター・なか真水』はもちろんのこと、職業政治家の力に打ち勝つ、『ドクター・中松応援団』を結成する。そして、『Invention is LOVE』(邦題・発明は愛)という曲を作ったので、全米ツアーをする。目標がないと、ただ生きているだけになってしまう」
目標を設定するからこそ、いろいろ将来を考える。
「それも発明ですよ」
そう言って、優しく微笑む。気になることがある。100歳までに実現したいことの中に、18回目の出馬はあるのか─ということ。
「可能性は排除しない」と前置きした上で、「人のためになることをし続けたい」と話す。
「世のため、人のためにたくさん発明をしてきました。今の職業政治家は、自分ファーストです。自分のことばかり考えている。今回の候補者を見渡すと、職業政治家、目立ちたいだけの不まじめな人、そして私のように真剣に東京都をよくしたい人の3タイプがいたと思います。まじめに東京都をよくしたいと考える人が評価される選挙に直さないといけない。17回も選挙に出ていますが、まだ直りません。その間、日本はどんどん国力が落ちてしまった。一刻も早く、能力のあるまじめで義の心を持っている人が政治家にならないといけない。そのために私は頭を使う」
Inventionには、「発明」の意味の他に、「創意」という意味も含まれる。ドクター・中松は、これからも私たちを驚かせる世界を創ってくれるに違いない。
取材・文/我妻弘崇
なかまつ・よしろう 1928年東京生まれ。国際最高教授。5歳で「自動重心安定装置」を発明。東京大学工学部卒業後、三井物産に入社し、ヘリコプターによる農薬散布などを発明し、記録的なセールスを達成する。29歳のとき「ドクター中松創研」を設立。「灯油ポンプ(醤油チュルチュル)」や「フライングシューズ」など、現在の発明件数は3900以上。科学技術庁長官賞、イグ・ノーベル賞栄養学賞を受賞。