困難にある方々に寄り添う
手話に関する公務以外にも、積極的に参加してこられたのは、社会的に弱い立場にある人々に関連する行事だ。
「障害のある人々が音楽とダンスを楽しむことを目的とした『ドレミファダンスコンサート』にも毎年のように出席されていて、今年7月の大会で5回目となりました。毎回客席では、音楽に合わせて手拍子を送られたり、ポンポンを振られたりと、楽しげなご様子で。佳子さまはダンス経験がおありですから、コンサートを毎年楽しみにされているのかもしれません。
常に障害のある人々に意識を傾けてこられた佳子さまは“困難にある人に寄り添うこと”を皇族としてのテーマとされているように思います」
名古屋大学大学院の河西秀哉准教授は、こうした佳子さまの姿勢には、ある方の姿勢が強く影響を及ぼしていると話す。
「明治以降、皇室は社会的に困難にある方々に目を向け、寄り添ってこられました。特に、障害のある人々に目を向けてこられたのが今の上皇ご夫妻だと思います。ご夫妻は、今までスポットが当たらなかった人々に積極的に歩み寄り“国民と苦楽を共にする”という姿勢を貫いてこられました。ご夫妻のそうしたご姿勢が、佳子さまにも影響をもたらしているのだと思います」(河西准教授、以下同)
上皇ご夫妻から受け継いだ視点は、佳子さまの“使命”といえるのかもしれない。
「皇室の方々は、それぞれのカラーや興味関心に基づいて公務を担われます。佳子さまの場合は、ジェンダー平等や障害者に関連する公務を多く担っておられます。これには、ご自分の興味関心も影響しているでしょうが、佳子さまが“困難にある方々に寄り添う”という皇室の重要なテーマを引き継いでおられるからともいえるでしょう」
見いだされた皇族としてのテーマは、佳子さまにとって大切な居場所なのだろう。
河西秀哉 名古屋大学大学院人文学研究科准教授。象徴天皇制を専門とし、『近代天皇制から象徴天皇制へ―「象徴」への道程』など著書多数