登録してすぐに養子縁組の話がきた

 特別養子縁組を通じての子どもの迎え先としては、自治体の児童相談所と、民間のあっせん団体の2つの選択肢がある。久保田さんは民間団体が開いた説明会で信頼できる相談員に巡り合えたこともあり、そのまま登録を決めた。

「登録してあまり間をおかずにさっそく、養子縁組を希望している妊婦さんがいると連絡がありました。でも、いざ出産すると親の気持ちが変わり、縁組が成立しないこともあるんです。ですから私たち迎える側は焦って新生児用品をそろえたりせず、ぎりぎりまで準備をしないよう団体から説明を受けました」

 子どもを委託する側の事情は、予期せぬ妊娠や病気、経済的困窮などさまざまだ。特別養子縁組制度は、子どもの虐待に歯止めをかける重要な役割も担っている。

 久保田さんが登録した民間団体では、養子縁組の対象が新生児の場合、退院に合わせて養親が産婦人科に迎えに行くケースが多い。そこで生みの親と対面し、言葉を交わすこともできる。

はなちゃんの4歳の誕生日は自宅で絵本を読んだ 写真/本人提供
はなちゃんの4歳の誕生日は自宅で絵本を読んだ 写真/本人提供
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実際に会って、お話ができて本当によかったと思っています。娘が“生みの親”のことを知りたがったとき、どんな人かきちんと伝えられるようにしておきたい気持ちもありました。

 生みのお母さんは育てたくても育てられない現状を受け止め、子どもの幸せを考えて養子縁組制度を自分で調べ、利用したはず。その勇気にも感謝をしています」

 また同団体では、子どもの心の健やかな成長のため、3歳になるまでに“真実告知”をするよう推奨している。

 事実を隠し続け、子どもが成長した時点で突然真実を知ることは、子どもにとって大きなストレスとなる。久保田さんもはなちゃんが2歳のころ、パパ・ママとは別に“生みの母”がいることを伝えた。

「そんな小さい子が理解できるはずない、という声もあると思います。でも、例えばお腹が大きなママさんを見たとき、赤ちゃんが生まれるとはどういうことか3歳児でも自然と興味を持ちます。

 そのとき“生みの母”のことを隠そうとすれば、自分は一緒に暮らしているママのお腹から生まれたと当然思うでしょうし、聞かれた親もしどろもどろになってしまう。親子関係に、嘘やごまかしが生じることのほうが問題だと感じるのです」

 はなちゃんにどのように真実告知をしたのだろうか。

パパとママのほかにもうひとり、自分を大事に思っている人がいる。それって素敵なことだねと、娘にも話しています。

 でも子どもだって、気持ちが揺れ動くこともあります。そんなときにどう対応すれば子どもが安心するのか、相談員の方はそういうことにも寄り添ってくださるんです」

 はなちゃんも成長するにつれ「なぜママは赤ちゃんを産めなかったの」「ママのお腹から生まれたかった」と発言することもあった。

「“赤ちゃんごっこ”をしたがるときもありました。私のお腹に毛布をかぶせて、今生まれましたー!と一緒になってやることで、気持ちが落ち着いたようでした。そのときの子どもの状態で、“生みの母”の話をしたほうがいいときもあれば、少しお休みしたほうがよいときも。多くの親子を見てきた相談員の方の助言は頼りになりますね」

はなちゃんが1歳7か月のときに軽井沢のカフェにて 写真/本人提供
はなちゃんが1歳7か月のときに軽井沢のカフェにて 写真/本人提供