言うべきことははっきり言いたい

 時は戻るが、2016年、都知事選に立候補しようとして大騒ぎになったのも記憶に新しい。女性たちとの華やかな噂を振りまく一方で、言うべきことは言っておく気骨あふれる一面がある。

 不倫は文化騒動や離婚などで仕事を失い、その次は政治発言がもとで、やはり仕事を失った。

「それで生活ができなくなったとしても、オレは戦争への道だけは行くべきじゃないと思う。憲法の解釈を変えたら地球の裏側にまで派兵できる法律、それはダメだよね。オレはデモに行ってくるって理子に言ったら、“どうせ止めても行くんでしょ”って(笑)」

 いい夫婦だ。

 国会議事堂の前で、「戦争は文化じゃない!」と訴えた。

「収入は半分どころじゃなくて、10分の1になりましたけどね」

 その一方で、通っているスポーツジムが一緒、同年齢だったこともあって、当時の政権を握っていた故・安倍晋三元首相とは交友関係にあった。

 思想よりも心情。おそるべき人たらし。

「そういえば、東日本大震災のチャリティーパーティーのときのこと。皇后美智子さま(当時)がオレのほうにいらして、声をかけてくださったことがあったんですね。『わたくしのお友達2人が、あなたが出演されるドラマが昔から大好きで。あなたの大ファンなんです。一緒に写真を撮ってもらってもいいですか?』って」

 おそらくその友達2人のうちの1人は、美智子さまなのではないか。

 ご自身も、石田純一が主役のトレンディードラマを楽しみにされていたのではないか─。

 古希の男は5kmを目安に毎日走っている。

「やはり酒も飲みたいし、体形も維持したいし。主治医には『無理はよくない。走ったからといって暴飲暴食をしていいわけではない。気休めですよ』と言われていますけどね」

 靴下をはかない男のブログタイトルは─《NO SOCKS J LIFE》


本橋信宏(もとはし・のぶひろ)
1956年、埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。文筆家。ノンフィクション、小説、エッセイ、評論と幅広い活動を行う。2019年、『全裸監督 村西とおる伝』(新潮文庫/太田出版)がNetflixでドラマ化、世界190か国で配信され、大ヒットを記録する。最新刊は『アンダーグラウンド・ビートルズ』(共著・藤本国彦/毎日新聞出版)

本橋信宏(もとはし・のぶひろ)撮影/山崎凌
本橋信宏(もとはし・のぶひろ)撮影/山崎凌
【写真】バブル期を駆け抜けた、デビュー当時の石田純一