とはいえ、幼子を抱えた首相が誕生すれば、長らく行われてきた“おじさん政治”からの脱却により、国民の信頼を少しずつ取り戻せるかも。だが、ここに3つ目の危機が潜んでいる。

燻ぶり続ける“裏金問題”

「今回の総裁選では、菅義偉前首相と森喜朗元首相が進次郎氏を支援していますが、森元首相は裏金還流を主導した人物としても名前が挙がっています。それなのに、自民党は森元首相を国会に呼んで説明させなかった。進次郎氏が首相になったら、裏で森元首相が実権を握るはずです。そうなると、自民党は何も変わらないことになる」(前出・田中氏)

 森元首相は、裏金事件への関与を否定してはいるが、今も明確な説明はしていない。疑惑は燻り続けている。

 進次郎氏は、冒頭の配信番組でこうも語っていた。

「私も自民党所属議員のひとりとして、総裁選を日本の政治不信の払拭につなげるように関わっていきたい」

 しかし、疑惑の人物・森元首相が進次郎氏を支援しているとなれば、その言葉は偽りにしか聞こえない。

 こうした状況に強い危機感を覚えた一部の議員は、進次郎氏の対抗馬として、ある人物を推す。それが“コバホーク”こと小林鷹之氏だ。

 小林氏は、東大から財務省に入省後、2012年に自民党から出馬し初当選。第2次岸田内閣では、経済安全保障相に抜擢されて初入閣した若手のホープだ。小林氏は、8月19日に会見を開き、総裁選に出馬する意向を明らかにした。ただ、ここでも暗躍する人物がいるという。

「それが福田達夫氏です。達夫氏は、祖父が福田赳夫元首相で、父親が福田康夫元首相という2人とも首相経験者。達夫氏は、進次郎氏を潰すために小林氏を出馬させたのですが、狙いは裏で糸を引く森元首相です。達夫氏の祖父・赳夫氏は、安倍派の源流である『清和会』をつくった人物で自民党政治の刷新を訴えていました。だからこそ、清和会を裏金政治の派閥にした森元首相が許せないのだと私は見ています。いまだキングメーカーとして暗躍する森元首相の影響力を排除しようとする、若手による自民党改革の動きなのです」(前出・田中氏)

 総裁選は9月12日告示、同月27日投開票。どうなる、ニッポン─。