浪曲界の二刀流デビュー

 天才落語家・立川談志さんをも魅了した浪曲。しかし、長らく技を披露してきた浪曲師たちが亡くなりつつある。

「全盛期を知る浪曲師たちが高齢化しており、2021年には私の師匠も亡くなりました。その際は“私がこれ以上、頑張っても……”と一時は引退も考えました」

 だが、冒頭で澤が語ったように、師匠の言葉を胸に活動を続けてきた。そこで新たな道を見出していく。

「三波春夫さんのように歌手としての活動をすることにしたんです」

 2023年2月、浪曲界の二刀流で歌手デビュー『風の演歌節』をリリース。2024年5月には、セカンドシングル『Soul of 浪花節』もリリースした。

「『風の演歌節』は、浪曲師の私が歌手になった作品で、2作目の『Soul of 浪花節』は浪曲、芝居、歌舞伎などの要素がギュッと詰まった楽曲です。特に『Soul of 浪花節』には、桑田さんのように浪曲の“節”も組み込んでいます。これは、私がずっとやりたかったこと。浪曲師が歌うということで、興味を持っていただけることも多く、ラジオで曲を流して頂いたこともありました」

 2024年7月には、林寛子が経営する東京・大田区にあるカラオケサロン『ラブリー寛寛』で、共同ライブを開催。浪曲と歌手の二刀流として活躍の場を広げるが、浪曲もおざなりにしていない。

林寛子と共同ライブを開催した。左から曲師の沢村まみ、林、澤雪絵(本人提供)
林寛子と共同ライブを開催した。左から曲師の沢村まみ、林、澤雪絵(本人提供)
【写真】歌手と浪曲の二刀流で活動する澤雪絵

「私が浪曲の世界に入ったときに3歳だった娘も、今は成人しています。そんな娘が最近“また聞いてみたい”と改めて浪曲に興味を持ってくれています。だから、小学生に向けて浪曲を披露する場を作ろうと考えています。子ども向けにアレンジした浪曲を、今後は披露していく予定。娘のように大きくなってから“また聞いてみたい”と思ってもらえたら嬉しいですね」

 今後の抱負も語る。

「浪曲の興行師がいなくなって、口演も限られた場所でしか行えないという現状があります。なので、今後は全国でも浪曲を披露できればと思っています。2024年9月下旬には縁あって、北海道の札幌で浪曲をやらせていただくことになりました。こうしたご縁が広がっていくように頑張っていきたいと思います」

 浪曲の未来を切り拓いてほしい。