目次
Page 1
ー 《この世界に行きたい》
Page 2
ー 加害者の飲酒運転で《また殺された》
Page 3
ー 疑われる飲酒運転の常習性
Page 4
ー 《これが何年、何十年も続くんでしょ》

《死ぬ事よりつらい事があるなんて知らなかった》

 SNSで、こう苦しい胸の内を綴るのは、家族3人を失った女性だ。

 5月6日、群馬県伊勢崎市の国道17号で、走行中のトラックが反対車線に飛び出して乗用車と衝突。これにより、乗用車に乗っていた塚越湊斗くん(2)、父親の寛人さん(26)、祖父の正宏さん(53)の3人が亡くなった。

 トラックは法定速度を時速30㎞も超過する、時速90㎞で走行して、事故を起こした。

 突然の事故で家族を失ってから、湊斗ちゃんの母親は冒頭のように悲痛な思いを吐き出し続けている。

 事故当時、母親は第2子を妊娠中だった。8月12日には、寛人さんと湊斗くんの小さな骨壺の写真とともに、こう投稿した。

《夫と息子です。加害者の方、見ていますか。私は毎朝2人に挨拶しています。法定速度で走っていれば、今も私の横にいてくれた人達です。スピードを守らなかった加害者があの場所に居たせいで私の世界が死にました》

 事故があった日はGWの最終日。湊斗くんたちは埼玉県のレジャー施設からの帰りだった。湊斗くんも自宅に帰ったら、母親に今日の思い出を話すつもりでいただろう。

《この世界に行きたい》

事故が無かったパターンを想像して、おかえりって言った後じーじにお礼を言って見送って、手を洗って、パパが作った夕飯食べながら買ってもらった物や出来事を見たり聞いたりして、みんなでお風呂に入って寝かしつけしてもらって、ゲーム一緒にやって時間になったら寝室に行く。この世界に行きたい》

 それは、もう叶わない。トラックの運転手が法定速度を守っていれば……。そう怒りと悔しさばかりが募った。