そんな中、急速に浮上してきたのが高市氏。出馬会見は立候補届出の何と3日前と、遅れに遅れました。前回2021年の総裁選は、安倍晋三前総理が後ろ盾となって議員票は2位の大健闘。保守派の間で「サナエブーム」を巻き起こし、「安倍後継者」のポジショニングを不動のものとしました。しかし今回は情勢が一変、一昨年安倍氏が亡くなってからは孤軍奮闘を強いられ、弱り目にたたり目で、同じ保守派から若手のホープ小林鷹之前経済安保大臣が先に出馬表明してしまいました。また、20人の推薦人が集まるかどうかという事態に追い込まれていたのです。
しかし、辛うじて立候補にこぎ着けていく間、追い風が吹いてきました。総選挙で対峙する立憲民主党の代表選では保守の論客で鳴らす野田佳彦元総理が優勢です。重厚感のある相手には、フレッシュさだけでなく一定の閣僚経験が求められる。最大の同盟国アメリカでは、ドナルド・トランプ前大統領と、女性初の大統領を狙うカマラ・ハリス副大統領がデッドヒートを繰り広げている。「保守」「女性」の論客というキャラが立っている高市氏にはいずれが勝利しても相性が良さそうです。
そして9月16日(月)読売新聞朝刊の情勢報道では、いきなり高市氏が小泉氏を大逆転。追う者と追われる者の立場が入れ替わったのです。どんな大技を使ったのでしょうか。
高市早苗氏「空白の一日」で起死回生の一手
石破茂陣営の平将明元内閣府副大臣が指摘します。「高市さんの文書だけ、全国の党員に届いている。他の陣営は一切出していない」。上川陽子陣営の牧原秀樹元経済産業副大臣は「世論調査の数字を見ると、高市さんの文書はめちゃくちゃ効果的だった」。その文書とは今、大問題となっているたった1枚の「政策リーフレット」です。
党総裁選挙管理委員会(選管)は9月3日に8つの禁止事項の1つとして文書郵送の禁止を決め、4日に各候補に通知しました。それなのに全国の党員宅に9月5日に届き、何と9月6日午前便で到着した家もあります。議員や秘書は当然、自民党員なので自宅に届いて驚き「これはルール違反か調べて欲しい」と連絡が有りました。私も仕事柄、公職選挙法など諸制度が専門であり、両日とも確認してきましたが、結論としてはセーフです。
到着がもう数日遅ければ、明らかに通知後にルール無視で発送したと判定されていた。最近の郵送事情として、到着までに2~3日はかかります。9月5日や6日に到着したので、逆算すると9月3日頃に発送したと推定される。この9月3日という日付は、禁止は決まったけど各陣営には知らせていない状態、まさに空白の一日だったのです。このルールの適用は4日からでしたが、すぐさま3日に通知されていたら、「正式に伝えた」「聞いたのは発送した直後だった」と押し問答になったでしょう。