「失われた10年」女優としての明菜
所属事務所を辞め、個人事務所を設立した明菜は、やがて長年籍を置いたレコード会社、ワーナー・パイオニアとも決別。その後もさまざまなトラブルに見舞われ、'80年代の輝きを失っていく。
「迷走してしまったのは、中森明菜を利権と考え、群がった人たちに乗った本人の甘さが原因ではないでしょうか。利権と考える人たちの中に芸能界を仕切れる本当の大物もいませんでした」(田中氏)
「トラブルに巻き込まれ、マスコミに叩かれると明菜は『そんなことしてない』『そんなことないのに』と思い悩み、ますます落ち込んでしまう。もしマッチとあのまま結婚、そして離婚して踏ん切りをつけていたらもっと早く吹っ切れて、復活することができたかもしれない」(石川氏)
復活を夢見るファンの期待にも応えられず、もがき苦しむ歌姫。そんな明菜が活路を見いだしたのが俳優業である。
'92年に安田成美とW主演した月9ドラマ『素顔のままで』(フジテレビ系)でダンサーの卵である月島カンナ役を熱演。最終回では最高視聴率31・9%の大ヒットを記録している。
冒頭で触れた今年7月のライブでも客席から「カンナ~!」の声がかかると、カンナの役の声で「優美子ォ~(安田成美の役名)」と返す一幕もあった。
明菜の演技力について、'88年のドラマ『中森明菜のスパゲティー恋物語』(フジテレビ系)で共演した俳優・石田純一(70)は、
「この物語は小学生の妹と弟がいる気丈な姉(明菜)が、3年前に別れた男と再び出会うラブストーリー。アイドルだから、自分が演技のフォローしなくてはと思っていたら、明菜さんはまったく必要なかった。とにかく細かいナチュラルなお芝居が素晴らしかった」
と絶賛している。
'90年代に入って女優として新たな道を歩んでいく明菜。暗中模索の中、デビュー20周年を迎えた2002年。ついに“歌姫復活”の確かな手応えをつかむ。