引退して喫茶店の客だった男性と結婚

 しかし時代は変わり、ドラマや映画に出て、バラエティー番組でコントもできるマルチなタレントが求められた。

「『スチュワーデス物語』がヒットしたし、事務所としては女優に比重を置いてほしいと思っていたんでしょう。でも、私としては歌いたかったので……」

 20歳で2度目の大きな決断をする。'87年、芸能界を引退。

「当時の事務所には、何不自由なく大事にしていただきました。でも、結婚をして、家庭も欲しかった。思い切って辞めてしまわないとリセットできないのかなって」

 辞めると決めてからは、周りから人が去っていった。

「今まで“ちえみ、ちえみ”と言っていたスタッフも、私と口をきいたらヤバイみたいな感じになって。でも、人気が落ち目になって辞めるわけではなかったので、これでいいんだって」

 大阪の実家に戻り、喫茶店を手伝いながら、次に進む道を探った。

「私が本当にCAさんになったらウケるかなと思ったのですが、身長が足りませんでした(笑)。芸能界に未練はなかったんですけど、家の前に止まっていた車からカメラで狙われたりするんです。ある記者さんには、私が表に出ないから追っかけるんだって教えられて。子どもを守るためにも、関西だけで芸能界に復帰することにしました」

 '89年に喫茶店の客だった男性と結婚。3児を授かったが、'99年に離婚。'00年に再婚して2児をもうけ、'10年に離婚。'11年に3度目の結婚をした相手には2人の子どもがいて、7児の母になった。

 子育てに忙しい毎日を送っていたが、病魔に襲われる。

「特発性重症急性膵炎では、35日間の入院をしました。'19年に舌がんで、舌の3分の1を切除。悲しみの底まで落ちましたが、前を向いて乗り切るしかないですから」

 アイドルとして活動していたときも、天真爛漫な明るさが周囲から愛された。

「田原俊彦さんには、レコード会社の後輩として可愛がってもらいました。トシさんのファンにも“妹分”みたいに応援していただきました。私はもともと、マッチ派でしたけど(笑)」

 シブがき隊も、'82年にデビューした同期。

「フッくんが“集まろうぜ”と言って、石川秀美ちゃんと優ちゃんと伊代ちゃんが来て。みんなで可愛らしいプレゼント交換とかしていました」

 堀がホームパーティーを開いて、仲間が集まったという。

「私はバイバイとみんなを見送るだけ。その後、ヤッくんが秀美ちゃんを送っていって、そこで仲よくなったみたい」

 図らずも恋の取り持ち役になっていた。

「私はパーティーを開催する側で、そういう役割をしている間に、アレ!?っていう感じ。つちやかおりちゃんも“参加したい”と言って、結局は来なかったけど、どこでどう出会ったのか、フッくんと付き合い出して(笑)」