大事な部分をカットして話す
もし、男性オリンピアンが16歳の女子選手に同じことをしたら、ハチの巣をつついたような大騒ぎになると思いますが、この件は男子選手が被害を訴え出たわけではないこともあって、それほど燃えませんでした。
しかし、9月9日放送の『ABEMA Prime』に出演していた安藤さんを見て、ヤバさの真髄を見た気がしたのでした。
この日のテーマは、妊娠のアウティングでした。アウティングとは、本人の了承なく、外野が妊娠を公開してしまうこと。そもそも妊娠はプライベートなことですし、特に妊娠初期は何が起きるかわかりませんから、仮に気付いた、もしくは打ち明けられても、そっとしておいてあげてほしいもの。しかし、仕事の引継ぎなどの都合から、第三者が勝手に上司に報告することがあるそうです。
2013年に出産した安藤さんですが、妊娠を隠し続けていました。同番組に出演した安藤さんは、当時を振り返って、「今はアスリートが赤ちゃんを産んで復帰すると、すごくリスペクトされる時代だと思うんですけど、10年前は、アスリートはボーイフレンドがいてもダメだった。時代によってちょっと違うのかな」「絶対に批判される。私は、絶対バレないようにしないといけないって……」と語っています。
不自由な時代のアスリートだったんだ、気の毒だなぁと思う人もいるでしょうが、私に言わせると、安藤さんは「大事な部分をカットして話す人」だと思います。
安藤さんが妊娠を隠したのは、その時代の女性アスリートに交際相手がいるのがNGだったとか、現役選手の妊娠そのものが喜ばれなかったからではなく、彼女が独身だったからではないでしょうか。
結婚しなければ、子どもを生んではいけないという法律はないわけですから、独身のまま出産することは何の問題もない。けれど、あれだけの人気選手が現役中に結婚せずに出産するには、相手が既婚者だからなど何か深―いワケがあるのではないかと騒がれるのは目に見えています。だから、騒ぎを大きくしないためにも妊娠を公開するわけにいかなかったのだと思います。つまり、「時代のせい」ではなく、「個人的な事情」ではないかと思うのです。