日本俳優連合理事長として要望書を国に提出

 2020年3月、『日本俳優連合』は首相・官房長官・厚生労働大臣宛に『新型コロナウィルス感染防止措置に伴う公演などの中止に伴う声明 及び働き手支援についての緊急要請』という要望書を提出。西田さんは日本俳優連合の理事長だった。

《私たちは今般の政府のご意向に添い、不特定多数の人々が集まるイベントなどの開催自粛を受けて、俳優は、映画・演劇・イベントなどの主催者の指示に従い、中止(キャンセル)を受け入れております》 《しかし出演者へのキャンセル料等の話し合いには到底至らないケースが多く、生活に困窮する事態が見えています》 《私たちにとっては仕事と収入の双方が失われ、生きる危機に瀕する事態です》 《どうか雇用・非雇用の別のないご対応で、文化と芸能界を支える俳優へご配慮下さいますよう要望いたします》

「2020年当時は“コロナなんだから中止にせざるを得ない”という状況で、感染拡大を考えればそのとおりではあります。ただ、個人事業主で働いている俳優などはキャンセル料の交渉などがまったくできない状況でもあった。それを憂いて動いてくれたのです。もちろん国として芸能界、俳優だけ何か特別な措置を取るということは難しかったですが、西田さんらが動いてくれたことは、俳優たちには非常に心強かったと思います」

1999年10月、西田敏行が『大船撮影所』の存続運動に送った熱いメッセージ
1999年10月、西田敏行が『大船撮影所』の存続運動に送った熱いメッセージ
【写真】仲がいいことで有名だった西田敏行さんの貴重な家族ショット

 芸能界のために西田さんが動いたのはコロナ禍のこのときだけではない。冒頭の「生きる情熱!」とは西田さんの弁。1999年に神奈川県鎌倉市にある『松竹大船撮影所』の閉鎖・売却が発表された際の話だ。

「大船撮影所は60年以上の長い歴史を持つ撮影所。『男はつらいよ』シリーズなど名作がここで撮影されてきました。閉鎖には反対の声も多く、存続を訴える運動が松竹の労働組合を中心に巻き起こった。その運動に対し、熱いメッセージを送ったのが西田さんです」

 そのメッセージが以下。

《生きる情熱! 映画への熱情! 失うことなく働ける現場を確保して下さい 皆さんの仲間 俳優西田敏行

 松竹労働組合の中央書記長だった梯(かけはし)俊明さんは当時をこう振り返っている。

「大船撮影所の売却の問題は、『釣りバカ日誌11』の撮影中でした。監督だった本木克英は当時、松竹労組の組合員で、大船撮影所の売却に反対することに対して、“全面的に協力する”ということで、『釣りバカ11』スタッフ全員が“大船をなんとか残そう”という雰囲気になっていたんですね。

 そのなかで西田さんに激励のメッセージをいただけないかとお願いしたら、すぐに直筆でメッセージを書いてくださった。西田さんのメッセージがきっかけになって、大船撮影所にゆかりのある俳優さんや著名な方から瞬く間に多くのメッセージが集まりました」

 大御所と呼ばれる俳優になっても、“仲間”のために動き続けた役者人生だった。