佐々木さんは、神奈川県立湘南高校で甲子園優勝を果たしている。慶応大学に進学し、フィリピンで行われたアジア大会に東京六大学選抜メンバーとして参加。そこで長嶋氏と出会った。
「当時は私が4年生で、長嶋さんが立教大学の2年生。ホテルが同部屋でした。ベッドに横になって10分もたたないうちにドスンと音がして、何かと思ったら長嶋さんがベッドの下に落ちている。それでベッドに戻るのですが、今度は頭から落っこちて。当時の長嶋さんは、あまり話さない人で、野球談議をした記憶はないですね。でも、長嶋さんと過ごした2週間は楽しかった」
こんな思い出もあるという。
「フィリピンのお土産に長嶋さんと一緒に果物を買いまして。帰国して2人分に取り分けたけど、それを入れるモノがない。そこで私の母親が正絹のちりめん風呂敷を長嶋さんに貸してあげたのですが、返ってこなかったですね。私から“風呂敷を返して”とは言いにくいですし、長嶋さんなら、まあ仕方ないか、と(笑)」
“野球好き”天皇陛下との思い出
日本のプロ野球を見続けてきた佐々木さん。1969年には、こんな大役を任されたことも。
「今の天皇陛下、当時9歳の浩宮さまがオールスターの観戦に来られて、私が説明役を務めました。私が持っていったグローブを“貸してください”と言われて、お貸しすると気に入ったのかずっと離さない。可愛かったですね」
ほかにも、佐々木さんだからこそ知る、小学生時代の天皇陛下のエピソードも。
「オールスターは夏の暑い時季の開催で、試合観戦の途中で休憩を入れたのです。当時は荒川区にあった『東京スタジアム』が会場で、そこの名物がミックスジュース。みんなミックスジュースを飲むのですが、殿下はどうするのかと思っていたら、ミックスジュースには目もくれずに、ずっとチョコレートを食べていました」
“ON時代”からプロ野球選手として、また解説者、キャスターとして日本球界を見てきた佐々木さん。大谷翔平らメジャーリーグで活躍する日本人選手も増えてきたが、日本の野球について思うことがあるようだ。
「日本のプロ野球では、王さんと長嶋さん以来、真のスーパースターが育っていないのが不思議です。やっぱり、スーパースターがいないと野球はダメなんですよ」
日本プロ野球界のレジェンドとして、11月9日には東京・中野にある区民施設『なかのZERO』でトークライブを開催予定。まだまだ現役で球界の表もウラ側も語り尽くしていく。