いまや日本人の死亡原因の1位となっているがん。自治体が実施するがん検診や、個人で人間ドックを受け続けている人も多いが、「がん検診とがんのリスク検査(以下リスク検査)は、似て非なるものです」と教えてくれたのは、医師の田中善先生。
がんになる前の異常な細胞を見つける
「国が推奨するがん検診は、ひと言でいえば『がんを見つける』もの。つまり、発見されるのは“すでにできているがん”ということです。
これに対してがんリスク検査は、身体の中にある潜在的な『がん細胞』を見つけるもので、まだ腫瘍になっていません。検体中のがん細胞の多さから、今後がんになる可能性がどのくらいあるかを判定します」(田中先生、以下同)
私たちの身体では、健康な人でも1日に5000個ともいわれるがん細胞が発生している。これをその都度、退治して、がんになるのを防いでくれているのが、体内にあるリンパ球などの「免疫細胞」だ。通常はがん細胞を排除してしまえば問題にならない。
ところがストレスや糖尿病といった生活習慣病など、外的・内的な要因が加わり続けると、免疫細胞の仕事が追いつかなくなり、がん細胞が残ってしまい、塊の状態になったものが、がんだ。早期がんで見つけ、手術や治療を開始すれば治る可能性が高い。
「とはいえ、早期であってもがんとわかった時点で身体的、経済的な負担は発生します。『リスク検査』によって“がん未満”の段階で見つけることは、そうした負担を軽くすることに役立ちます」
がんリスク検査には、血液中や唾液中の特定の物質濃度を測るもの、尿中の物質をAIで解析した検査など、さまざまな種類がある。
「痛みが苦手な人は採血ではなく尿や唾液という方法がいいでしょうし、忙しい人には5分程度で終わるような手軽なものもあります。検査メーカーによっては感度(的中率)を公表しているところも。
種類も増えており一概にはいえませんが、実際に診療にも活用している検査に関しては、以前より精度が上がってきている印象です。リスク検査で引っかかり、精密検査をしたらがんが見つかった患者さんも少なくありません」