派手なマスクは、ビジネスの場にふさわしくないというのがその理由らしいが、西出さんの見解は?

TPPPOを照らし合わせて選ぶのが正解

その場に合わせた、ふさわしい振る舞いをすることをTPOといいますが、私はそれをさらに発展させた“TPPPO”を提唱しています。それぞれtime(時)、place(場所)、position(立場)、person(人)、occasion(場合)を表し、自分のポジションや、相手の人柄を考え合わせると、よりよいコミュニケーションが築けるという提案です。

 このマスクの例もまさにそれで、白や黒のマスクがふさわしい仕事もあれば、原色のマスクで明るい雰囲気を出したほうがプラスになる仕事もあります。ビジネスシーンとひとくくりにせず、自分の仕事とTPPPOを照らし合わせたうえで、マスク選びをするのが正解ではないでしょうか」

喪服の際は30デニール以下のストッキングでないといけない

 葬儀のときに女性がはくストッキング。色が黒であることはもちろんだが、それに加えて、透け感の出る30デニール以下を着用するのがマナーといわれている。

 なんとなく葬儀のときは薄手のストッキング、という認識を持つ人は多いと思うが、実際のマナー的にはどうなのだろうか。

 西出さんいわく、「確かにフォーマルな場では、一般的には『ストッキングを着用』とされています」とのこと。

ストッキングとタイツでは、ストッキングのほうが格が上だからです。ストッキングやタイツも服装の格に合わせて着用するという考え方です。タイツは本来であればジーンズと同じようにカジュアルな衣料ですので、儀式である葬儀にはふさわしくないともいえます

 ただし、冬場など、体調管理が必要な場合は「厚手のストッキングやタイツでも構わないのでは」と西出さん。

「無理して薄手のストッキングをはいて、体調を崩しては元も子もありません。葬儀に集中できる装いを自分で判断しましょう。タイツで葬儀に出席している人がいたら、事情があるのかなと察して差し上げる気持ちがマナー。一方的にマナー違反と言うことがマナーの欠如となります」

社会人は知っていて当たり前? 「漢字で書いてはいけない言葉」

 とあるユーザーがXに投稿した、『漢字で書いてはいけない言葉』の一覧が、波紋を呼んだ。「様々」「既に」「出来る」「分かる」など、その数は実に20個以上。文法上、これらの言葉はひらがなにするのが正解なのだという。

 この謎マナーへの反響は大きく、「勉強になりました」と受け入れる声がある一方で、「漢字で書いていけない言葉はない」「こんなマナーは初耳」など懐疑的な意見も。文章のマナーについて、西出さんの考えは?

「文章のマナーも、食事のマナーと同じ。大事なのは、受け取る相手の感じ方です。漢字が続く文章は読みにくいので、ひらがなにしてバランスを取る。それで相手が読みやすくなるのなら、素敵な心遣いだと思います」

 文法上の使い方は、「情報として知っておくくらいでよいのでは」とのこと。

日常生活で使う文章に関して、そこまで文法に神経質になる必要はないと思っています。失礼な文言はないか、わかりにくい表現はないかなど、相手の視点に立つほうが優先順位は高いのでは。ただ、文章や言葉遣いは時代によって変わるもの。その都度アップデートする意識は持っていたいですね

取材・文/中村未来

にしで・ひろこ マナーコンサルタント、マナー解説者。ヒロコマナーグループ代表。大学卒業後、参議院議員秘書などを経て、マナー講師として独立。多くの企業のマナー研修や講演を行う一方で、映画やNHK大河ドラマ、CM等のマナー監修、俳優へのマナー所作指導なども手がける。著書に『マナーのカリスマが大切にする 私スタイルの暮らし方』(主婦と生活社)など国内外で100冊以上。