《警察官を騙り徳島市内の80代男性から1000万円を騙し取った》
《現金500万円が入ったバッグを女性の自宅前に置かせ、騙し取った》
最近では珍しくなくなった“闇バイト”による犯罪のニュース。冒頭の事件もその一部なのだが、犯人が60代、70代というシニア層なのだ。
若者世代を狙っていると思われがちな“闇バイト”だが、詐欺や悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏は、
「決して若い人たちだけの問題ではないんです。“闇バイト”の誘いに乗りやすい人は、年齢を問わず経済状況が厳しい人たち。特に高齢者だと年金だけでは生活できない、と仕事を探しても時給は安いですし。簡単に稼げるという案件があれば、そこに連絡してしまいます」
と、話す。
「高齢者のほうがアドリブが利く」
シニア層なら社会経験も豊富で、詐欺の類いには引っかかりにくいと思うのだが、
「“闇バイト”の働き口を紹介するリクルーターは、人の心をつかむのが非常にうまい。お金がないという状況に“それは大変ですよね”と寄り添ってきて、“ならば稼げる仕事をやりましょう”と持ちかけてきます。
流れは、よく報じられているようにSNS上のバイト募集で連絡を取ってきた人を、秘匿性の高いアプリのテレグラムに誘導してアンケートで個人情報を書かせる。そして仕事をさせる段階で、身分を証明する免許証などの写しを送らせるというものですね」(多田さん、以下同)
そして実際の仕事だが、高齢者に多いのが銀行口座などの譲渡だという。
「銀行などで口座を作って、それを詐欺グループが借りる形で報酬を支払う。その口座は詐欺で騙したお金を振り込ませるものになります。リクルーターから聞いた話ですが、受け子や出し子でも、若者はオドオドしたりするけれど、高齢者のほうが不測の事態のときにアドリブが利くんだそうです。若者だと漢字が書けないで捕まったのもいれば、タトゥーが見えてしまってバレたりとか。シニアならスーツも着こなせるし、いろいろなメリットがあるそうです」
最近では一般的な求職サイトにも募集が載っているという“闇バイト”。自衛方法はあるのだろうか?
「難しいですね……。簡単に高収入を謳う案件は怪しいですが、最近は報酬が1万~2万円くらいの低額なものもありますし。連絡を取ってみないとわからないという部分もあります。ただ仕事の話を進める中で、テレグラムを使うことを指示してきたり、免許証など個人情報の提示を求めてきたら、まず“闇バイト”を疑ってください」
荷物を運ぶだけという仕事を受けた主婦が、やった後で受け子だったことに気づいたという事例もあったという。誰もが知らないうちに犯罪の加害者になってしまう時代。多田さんは求人サイトのあり方も問題がある、とこう話す。
「求人情報を右から左へと流して掲載するのではなく、クライアントがどんな企業なのか、信頼できる会社なのかを精査して掲載する必要があると思います。“深夜に猫を捜す仕事です”なんて、見るだけで怪しいじゃないですか。それを審査なしで載せるようなところから変えていかないと“闇バイト”の被害者がなくなることはないでしょうね」