阪神・淡路大震災から20年。伝説の舞台『ORANGE』の幕が再び開く―。作・演出の宇田学が10年務めた主演のバトンを託したのは、音尾琢真。
「 ‘11年から引き継いで、3回目になります。非常に体力的につらい舞台で……。稽古の段階から実際の消防服でやっています。火を通さないということは、すなわち中の熱も逃がさない。本当に暑いです。酸素ボンベも背負っているんですが、じわじわくる重さで。酸素マスクを装着するシーンもありますが、実際に酸素が出るわけではないので息苦しい」
体力の衰えを感じると笑わせつつも、つらくても意義ある作品だからこそやれると、真剣なまなざし。舞台は現在の神戸市消防局。
「消防士さんたちの青春群像劇ともいえるお話でして。神戸ということは、上の世代になると、阪神・淡路大震災を経験しているわけなんです。ということで、震災の回想・再現シーンもあるんですが、そこがまた、けっこう心苦しい。見てて、つらくなるような内容で……」
実際の消防士100人以上を取材して作られた物語。人員も設備も装備も機材も足りず、助けたくても助けきれなかった悔しさが描かれる。
「ほぼドキュメンタリーなところもあるので、やるたびに苦しいですね。役者でお芝居だとはいえ、どこまでも本気で取りかからなきゃいけないんです」
心身を摩耗させながら、取り組んでいる。 ’13年は東京と大阪だけだったが、節目の年である今年は9都市で公演される。
「北は僕の出身・北海道まで 特別な思い? あります。東京で作る舞台作品は、たまにしか北海道でやれないんですよ。そして、こういうお話は、より見てもらいたいなと思うんですよね。しかも、主演じゃないですか(笑い)」
音尾の北海道の事務所のスタッフや知人でもまだ見られていない人は大勢いるという。大泉洋らNACSのメンバーは?
「だいたいみんな来てくれて、号泣してくれて。笑いのエッセンスもたっぷりありますし、最終的に前向きなお話なんですけど、“あれをもう1回見に行くのは勇気がいるな。うーん……見る”と。それがはたして、いい宣伝なのかわからないですけど(笑い)」
『龍馬伝』『花燃ゆ』などにも出演し、確実に俳優としてのポジションを築き上げている音尾。
「売れた? ないですよ 正直に言えば、さらにいい役をやりたいという思いは常にあります。上を見たらキリがない。ただ、俳優としてちゃんとご飯を食べられてはいるので、今度はCMの来る俳優さんになりたいです(笑い)」