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ー 「死ぬしかないと思いました」
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ー 「足が動かない分、疲れも大きい」

 今年6月、タレントの佐藤弘道さんが脊髄梗塞で下半身まひになったというニュースは、お茶の間に衝撃を与えた。

「死ぬしかないと思いました」

 佐藤さんといえば『おかあさんといっしょ』(NHK Eテレ)の「第10代体操のお兄さん」として知られ、番組卒業後は、タレント活動とともに体操インストラクターとしても全国を駆け回っていた。

 元気の代名詞だった彼が突然、下半身まひになってしまったということは、周囲も本人も当初受け止めることはできなかった。

病名がわかって下半身まひを告げられたときは、家族に一生迷惑をかけて生きるなんてできない。死ぬしかないと思いました」と佐藤さんは振り返る。

 脊髄梗塞は脊髄の血管が詰まることで神経が機能しなくなり、下半身まひ、排泄障害などの後遺症が残る病気だ。発症は10万人に1人というまれな疾患で、動脈硬化や大動脈解離などが原因で発症する。

 高血圧や糖尿病、動脈硬化、心疾患などの持病がある人は発症リスクが高くなるが、佐藤さんに持病はなかった。

毎年、健康診断を受けていますが特に異常はなし。脊髄梗塞を発症したあとの検査でも血管や脳に異常はなく、原因はわかっていません

 最初に異変を感じたのは背中の痛みだった。

妻に湿布をはってもらうと翌日には治ったので、気にしていなかったんです

 それから2日後、鳥取県に出張に出る日の朝、左足にしびれを感じたが、仕事への責任感もあり、とにかく搭乗することに。しかし、飛行機に乗る前から腰まわりの激しい痛みと吐き気があり、離陸後は歩行もできなくなって、着陸後、現地の病院へ搬送された。

MRIを撮ると脊髄がむくんでいて緊急入院しました。脊髄梗塞の疑いと診断されましたが、完治する治療法は確立していません。むくみを取る点滴を受けただけで、あとは神経を回復させるためリハビリをするしかないと告げられました

佐藤弘道さん
佐藤弘道さん

 入院当初はこれからの人生に絶望していた佐藤さんだが、仕事を長期で休むことになるので病名を隠し続けることはできない。発症から2週間後に直筆で病名を公表したことが、前を向くきっかけになったという。

公表したからには、歩けるようリハビリをするしかないと病気と向き合う気持ちになったんです。そこからはとにかくストイックにリハビリに励みました

 東京の病院に転院し、時間を持て余しているだろうと考える知人たちから本をたくさん差し入れでもらったが、一冊も読めなかったという。

1日中、汗びっしょりになるくらい歩行器を使用して病棟内を歩いて、筋トレも行っていました。夜は疲れて寝てしまうので、本を読む時間なんてなかったんです