「『侍タイ』の撮影も終盤に差しかかった'22年11月30日。父が脳出血でいきなり倒れ、半年間意識不明のまま帰らぬ人となりました。一度始めたことは最後までやり抜け。子どものころ、父に言われていた言葉を胸に、なんとかクランクアップ。
翌年から父の後を継いで米作りを始めました。ところが冬場の荒起こしから田植え、水管理、草刈り。稲刈りに乾燥、JAへの供出まで、本格的な米作りは初めて。今の自分ではとても無理だと、預かっていた田んぼをほとんど返したとはいえ、今も一町半(約1.5ヘクタール)7枚の田んぼで米を作っています。
いつかはおいしいお米を作りたい。日本の農政にいろいろ言いたいことはある。でも、まずは自分で納得するお米を作りたい。父や祖父が守ってきた田んぼを僕も守っていきたい」
“世界”を見据え夢はふくらむ
映画『侍タイムスリッパー』のヒットで映画監督としても、今後の活躍が期待される。
「時代劇にこだわっているわけではありませんが、忍者と相撲と侍は日本が世界と勝負できる強み。『水戸黄門』や『遠山の金さん』(テレビ朝日系)のような明朗快活な勧善懲悪時代劇と同時に、若い人たちがツッコみながら見られるシンプルな娯楽時代劇としてチャンスがあるのでは、と思う。
大ヒットした『SHOGUN 将軍』をはじめ、配信ドラマの時代。世界に通用するためには、なんといっても脚本が大切です。何人かの脚本家とチームで本当に面白いシナリオを書く体制で映画作りをしていかないと、世界に通用するのは難しいのでは?」
いずれは尊敬してやまない山田洋次監督の『男はつらいよ』のような作品を撮るのが夢だと語る安田監督。
57歳でヒットメーカーの仲間入り。今後の作品を大いに期待したい。
取材・文/KAPPO INLET GROO