皇族も生身の人間
昨年の誕生日会見で、記者から「衆参両院議長は9月、皇族数確保策に関する与野党協議で、女性皇族が結婚後も皇室に残る案についてはおおむね賛同を得られたとの見解を示しました」などと聞かれ、秋篠宮さまはこのように答えている。
「ただ一方で該当する皇族は生身の人間なわけで」という箇所についてどう考えるのかと、私は報道関係者などからいろいろと取材を受けた。佳子さまは生まれてから30年もの長い間、「あなたは、結婚したら一般国民になります。皇族でなくなります」などと、ずっと言われて育ってきた。本人もそのようにしっかり自覚している。それがどうだろう。「皇室制度が変わりました。結婚してからも皇室に残ってください」と、いきなり政府から言われても、佳子さまは大変、困るであろう。
娘を深く愛する父親の立場から、このことを秋篠宮さまは言いたかったのだと思う。結婚して普通の国民になったら、あれもしたい、これもやりたいといろいろ考えているはずである。こうした佳子さまの夢や希望などを突然、奪ってしまってよいものだろうか。
「皇族である前に一人の人間である」ということだと思う。佳子さまは内親王という重い立場ではあるが、その前に30歳の一人の女性である。幸福に生きる権利を、当然、彼女も持っている。政府や国会議員たちは、佳子さまの人生をもっと真剣に考えてほしい。皇室制度を変える前に彼女から意見を聞き、佳子さまに寄り添って議論を深めてもらいたい。というのが娘の幸せを願う父親の真情であり、それを秋篠宮さまは国民に向けて吐露したのだ。
「姉は、何でも話すことのできる頼りになる存在です。姉と過ごす時間は非常に楽しいので、よく姉の部屋で過ごしております。今は海外にいるのであまり会うことができず、寂しく感じることもありますが、ときどき連絡を取っております」
今から約10年前のこと、2014年12月29日、20歳の成年の誕生日を迎える直前に行われた記者会見で、佳子さまはこのように姉の小室眞子さんととても親しくしている様子を紹介した。
2021年10月26日、眞子さんは大学時代の同級生と結婚した。婚姻届を提出し受理されただけで、「納采の儀」や「朝見の儀」など、結婚に関連する皇室の儀式・行事は一切行われず、一時金は眞子さんが辞退するという異例のものだった。
《皇室としては類例を見ない結婚となりました》などという内容の談話を、秋篠宮ご夫妻は発表したが、それでも佳子さまは、《私は、結婚においては当人の気持ちが重要であると考えています。ですので、姉の一個人としての希望がかなう形になってほしいと思っています》(2019年春、国際基督教大学卒業に際しての文書回答)という姿勢を最後まで崩さず、姉を応援した。
姉がすでに結婚して一般国民となっているのに、佳子さまが結婚しても一人、皇室にとどまるだろうか。あれほど、姉のことを慕っている佳子さまにすれば、姉妹の情として、皇室に残ることは考えにくい。いろいろな意味で、佳子さまの結婚が注目される。
<文/江森敬治>