多くのドラマや映画だけでなく、舞台でもさまざまな役で作品を盛り上げてきた名バイプレーヤー。デビュー50周年という節目の年を迎え、改めてこれまでの半生を振り返る―。
「僕も時代にあまりついていけないタイプ」
「本当に早いですね……。あっという間に半世紀が過ぎていた。この道に入った当初は、50年先のことなんてまったく想像すらしていませんでした。でもふと気づけば50年がたっていて、70の年になっていました(笑)」
そう話すのは、俳優の升毅(69)。今年で俳優生活50周年を迎え、感慨を口にする。
その記念すべき年の幕開けを飾るのは、舞台『殿様と私』。名作『王様と私』を下敷きにしたウェルメイド作品で、マキノノゾミが脚本を手がけ、第15回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞するなど、高い評価を博してきた注目作だ。
「マキノ君とはお互い関西の劇団で頑張っていたころからの古い知り合いで、彼らしい楽しい作品だなって思いましたね。とりあえず腕を組んでドンとしていれば殿様っぽくなるということで、役作りはまずそこからでしょうか(笑)。世間知らずの偉い人に見えればいいなと思っていて……」
物語の舞台は明治19年の東京。升が演じるのは主人公の白河義晃子爵で、時代の急激な西洋化になじめずにいる頭の固い殿様として描かれる。
「最初はなんて頑固な殿様なんだろう、そんなに時代に抗あらがわなくてもいいじゃないか、と思っていたんですけど。でもよく考えたら、自分にもすごく当てはまっている。
まったく別人格を演じるものだと思っていたけど、実はすごく共感できる人物だった。というのも、僕も時代にあまりついていけないタイプ。デジタルは得意ではなくて、ガラケーからなんとかスマホにはしたけれど、いまだにiPhone8を使っていますから(笑)」
稽古は1月からスタート。演出のマキノや共演者と共に公演地・松本市に泊まり込みで稽古をし、本番に臨む。
「アンナを演じる水夏希さんはじめ、共演者のみなさん、初めましての方ばかり。僕としてはこの出会いを大切にしていきたいという気持ちがあって。楽しみと不安があるけれど、いずれにせよ僕にとっては50年目を迎える非常に大きな節目になる。だからすごく新鮮です」
20歳で俳優デビュー。役者を目指したきっかけはと尋ねると、何とも意外な答えが返ってきた。
「動機はかなりミーハーで、本当はアイドルになりたいと思っていたんです(笑)」