「最初は言うつもりは全然ありませんでした。でもメイクを見てほしくて動画を上げてるのに、コメント欄が『何で眉毛ないの?』『恋愛対象どっちですか?』なんて質問ばかりで。ネットの記事でも間違ったことが書かれたりして、だったら自分で言ったほうが早いなと思ったんです」
自らのセクシュアリティを世間に公表
とはいえプライベートな問題であり、とりわけセクシュアリティは繊細な題材だ。
自身の性自認と性表現を男性・女性という二つの枠組みに当てはめないノンバイナリーで、性自認にかかわらず、性愛の対象が男性であるマセクシュアルだと告白した。
「公表してよかったです。あれ以降、すごく生きやすくなりました。どうなんだろうって目で見られているより、全世界に発信しているほうが僕にとっては楽だったので」
過去を振り返れば、心ない言葉を投げられ、異質な存在として排除されたこともあった。注目されれば、そのぶんアンチも生まれてくる。それでも自分を貫いてきた。
「僕は、気にしない、期待しない、自分は悪くないと思って生きています。
自分は悪くないというのは、何の責任も取らないという意味ではなくて、価値観が全員同じではないということ。受け入れてもらえないこともあるし、10人中10人から好かれるはずはない。その気持ちがベースにあれば、そんなに傷つくことはない。
アンチにしても、考えても仕方がないことは考えないようにしています。そこに使う労力があるのなら、自分の仕事を頑張りたいから」
30歳の節目を迎え、念願の写真集も発表した。この先、彼が望むものとは?
「自分のメイクブランドを出すのが夢。海外には男性がつくったメイクブランドがたくさんあるけど、日本はあまり見かけない。僕が最初の成功例になれたらと思っていて。僕の中ではずっと前からブランド名も決めていて、いつでも準備できてる感じです(笑)。
本当にメイクが大好き。これだけコスメが好きな男性は他にいないと思う。こだわりが強いので、あとは納得できるものができるかどうか。でもそんなに遠くはないと思います。楽しみにしていてください」

取材・文/小野寺悦子 撮影/吉岡竜紀(インタビュー)