ジェジュン、ジュンスとともにJYJとして音楽活動を展開するパク・ユチョン。’10年の韓国ドラマ『トキメキ☆成均館スキャンダル』で演技の道へ。
「僕には特別な縁や運があると思います。でも僕自身は特別じゃない。“普通”でいたいんです」
歌手として出会った人、俳優として出会った人。出会いは人それぞれでも、いずれ双方の彼を知り、その奥にあるパク・ユチョンという人、そのものの魅力にハマっていく。それは1度知ると抜けられない“特別な”もの。
落ち着いた演技力と繊細な感性で魅了した本格俳優デビュー作『~成均館スキャンダル』以降、大人の恋愛心理劇『ミス・リプリー』を経て、感動のファンタジーロマンス『屋根部屋のプリンス』でトップ俳優の座を確立。
純愛ドラマ『会いたい』では切なさと愛らしさで女性たちをメロメロにし、サスペンスアクション『スリーデイズ~愛と正義~』では名優相手に骨太演技を魅せ、俳優としての才を更新し続けている。
痛みを感じないから、殴られても蹴られてもケロリとしていて、熱を感じないから、熱々のコーヒーも一気飲み。味を感じなければ、満腹感もないため、大皿料理を何皿たいらげても平気な顔をしている“感覚異常”な男。
最新ドラマ『匂いを見る少女』でユチョンが演じるチェ・ムガクは、その大胆さと図太さ(無感覚なだけ?)に加え、妙なまじめさと、刑事という職種もあって、女子の好きなタイプの“男子っぽさ”を感じさせるキャラクター。
「たぶんムガクは、これまで僕が演じてきたキャラクターのなかで、いちばん普段の自分に近い役だったと思いますね。でも、だから演じやすかったかというと、そうではなくて。演じる前はちゃんと演じきれるのか、楽しみより不安が大きかった役柄でした」
あまりにもムガク役がハマっていたので、これはかなり意外な言葉。
「彼は、いろいろな感覚が麻痺しているんです。そのため“感じる心”も失っている。おいしいものを食べて幸せだなぁとか、うれしいなぁとか感じないんです。でも、そうなったきっかけがある。ムガクの性格は、大切な妹が殺されてしまい、その悲しみを乗り越えるために作られたものだと思ったんです。だからこそ、もっとつらいというか……。そういった部分を表現することが、いちばん大変だったし、悩みましたね。ただ無感覚なだけでなく、ちゃんと悲しみも感じられないといけないと思って」
何をしても無表情のムガクは、ある種の笑いを誘う一方で、悲しいような、怒っているような、つかみどころのない不思議な雰囲気。1度見ると気になってしかたなくなってしまう。
なぜ? と思っていたら、その裏には「妹を亡くした心の傷が、常に意識としてあった」という、ユチョンの“こまやかな演技計算”が。やはり彼だからこそ、演じられた役。
「でも、ほんと大変だったんすよ!! ふつうは、殴られたら瞬間的に“痛いっ”って表情になるじゃないですか、身体も反応するし。それを痛くないフリをするわけで、思っていた以上に難しかったです。痛みを感じないという特殊な設定を、ドラマを見てくださっている方に不自然に感じさせずに見せるには、どうしたらいいんだろうと、すごく考えました」
ちなみに、痛みに強い?
「僕は、ものすごく弱いです。でも、痛いのはみんな嫌でしょう?(笑い)」
はい、もっともです。
「それに、大食いでたくさん食べなくちゃいけないシーンが何度もあって、死にそうになりました(笑い)。食べ物には、いちばんおいしいタイミングがあると思うんです。でも、撮影では、そんなこと関係ないですから。あらためて思いましたが、食事は、本当においしく感じるタイミングで、食べるべきです!」
そう力説するユチョン。無感覚なために何かと誤解されてしまうムガクですが、実際にそういう誤解を受けたことはある?
「たくさんありますね。例えば、10年前にデビューしたとき。僕のもともとの性格はもの静かで、内向的なタイプだったんですが、テレビ番組のスタッフさんなどに誤解されることが多かったんです。あまりしゃべらないでいると、“人気があるからって、いい気になっている”というふうに見られたりして……。 だから、意識的にもっと明るく、たくさん話をする性格に変えていったんです。それで、みんなと一緒だと、ついつい飲みすぎちゃう性格になってしまいました(笑い)」
取材・文/高橋尚子 撮影/廣瀬靖士