東京に住んでいれば東京電力、秋田で暮らしていれば東北電力といった具合に、地域の電力会社と契約するしかなかったこれまでの電気事情。
今年4月、その枠組みが取っ払われる。“電力小売りの全面自由化”の時代が幕を開けるからだ。
電力会社選びをサポートするサイトを運営する会社『エネチェンジ』の副社長で消費生活アドバイザーの巻口守男さんが、今回の自由化に至った流れを解説する。
「電気などのエネルギーは“与えられるものを使う”という概念でしたが、今ではライフスタイルにより合ったものを欲するようになり、エネルギーの自由化が進みました。
工場、オフィスなど電力の約60%を占める大口は、すでに小売りが自由化されています。4月から家庭向けの残り約40%を自由化することで“完全自由化”が実現します。来年にはガスも自由化され、エネルギーの自由化が総仕上げを迎えます」
以上のような経緯で、4月になれば政府が目的としていた、国民誰もが①事業者を自由に選んで電気を買えるようになること②作ろうと思えば発電所を作り電力供給者になれること③送・配電網を効率よく使えるようにすること、という“電力完全自由化時代”が到来することとなる。
このところ、ガス会社や携帯電話会社などが手がける「新電力」のテレビCMが目につくようになってきた。自由化の波に乗り、参入を目指している企業は多い。
電力の小売事業者になるためには経済産業省の審査を通る必要があり、現段階で認められている企業数は119社(2015年12月28日現在)。ガスや石油といったエネルギー関連会社、商社、鉄道会社、旅行会社、住宅会社、携帯電話会社、コンビニ、生協などが名乗りを上げ、着々と顧客獲得を進めている。
それぞれの会社が5~10のプランを発表する勢いだが、プランがすべて出そろうのは2月半ば。その中から、わが家にぴったりのプランをどう選ぶかに、得する人損する人の境目がくっきりと表れてしまう。
「大切なのは、会社を選ぶことではなく、プランを選ぶこと。家庭に一番合ったプランの会社と契約すればいい」(巻口さん)
選んだ会社がたとえ倒産したとしても、停電や供給が不安定にならないことも今回の自由化のメリットだ。巻口さんが続ける。
「新電力の発電量が不足した場合、大手電力会社が不足分をカバーする義務があります。電線などの送電設備は、これまでどおり大手電力会社が管理します。そこにA社、B社、C社……の電気が流れている状態。
川にたとえるとわかりやすいかもしれません。混ざり合った川の水(電流)は、A社が何かトラブルで水を流せなくなっても、流れ続けています。利用者はA社からの水は止まっていることなんて気づかずに、川の水を汲み上げ続けられるわけです」