昨季の世界選手権王者・フェルナンデスの連覇を阻止し王座奪還を狙う羽生結弦とパトリック・チャン。ソチ五輪の表彰台に並んだ3人が、今季のGPシリーズで火花を散らす中、突如として現れた新星・宇野昌磨。
15歳までの宇野は平凡な存在だったものの誰にも負けない練習量で頭角を現し始める。そして'14年春、4回転の練習を始めるや、わずか2か月で成功。3Aも跳べるようになり快進撃が始まった。
本人は小さいころからコンプレックスを抱えながらも、まるで童話の『みにくいアヒルの子』のように、強い気持ちを失わず、羽ばたく瞬間に備えていた。
「彼の悩みというのは身長がなかなか伸びないこと。連盟の公式プロフィールでは158cmと男子フィギュア選手の中では小柄なほうです。身長が低いことで年齢が下の子たちにまで“しょーま”と呼び捨てにされたりしていましたね。内心ではかなり悔しい思いをしていたんじゃないでしょうか。それをバネに、ここまで努力し、夢をつかんだように映ります」(連盟関係者)
転機は、'14年11月に全日本ジュニア選手権の優勝だった。'同年12月のジュニアGPファイナルでも優勝し氷上で輝きを放ちだした。
「最初に生の演技を見たのがジュニアGPファイナルで、いきなり、“すごいじゃん!”という感じでした。通常、4回転を跳べても、なかなかプログラムに入れられないもの。それだけハートが強く、しっかりと練習をしているからでしょう」(元フィギュアスケート選手で解説者の佐野稔氏)
昨季の全日本選手権では、羽生に続き準優勝し'15年3月の世界ジュニア選手権では世界を制した。
「まだ、ジュニアチャンピオンですから、羽生選手を脅かす域まで達していない。もちろん成長著しいが、ジュニアの域にいるなという印象ですね。シニアに転向し、ものすごく善戦していると思いますが、羽生選手を超えるためには、あと1種類か2種類の4回転ジャンプが必要だと思います。すでに羽生選手は2種類の4回転をプログラムに入れている。点数を飛躍的に伸ばすためには必須であり、それが宇野選手の今の課題ですね」(佐野氏)